ここは地の果て野間岬 – 野間岳

鹿児島湾を挟んだ二つの大きな半島のうち、左側のブーツのような形をしたのが薩摩半島だ。つま先に当たる南端には日本百名山の開聞岳がある。つま先とは反対側のかかとの部分からちょこんと飛び出している小さな半島が野間半島、その先端にある野間岳へ向かっている。

のどかな風景の向こうのぽっこりした山が野間岳だろう。

登山口の野間神社に参拝してから山頂を目指した。

独立峰なのでずっと登りだが標高はわずか591m。なので45分で山頂に着いた。

岬の向こうは太平洋。ここまで来ると、地の果てまで来ちゃったなあと感慨深い。

「さっきまでは光が当たってたんですけどね」

山頂にいた年配の男性が話しかけてきた。雰囲気からしてどう見ても地元の人だ。そもそも正月早々こんなところに登るのは地元の人しかいない。

「開聞岳がよく見えなくて残念ですね」

晴れてはいるけど、雲が多くて霞んでいる。男性が指差した先を目を凝らして眺めると、霞の奥にうっすらと開聞岳のシルエットが浮かんでいた。空気が澄んでいたらなかなかの絶景だろう。

「登ってきた道を下りますか?」

ええ。

「あちらを下ると石の門があるんですよ」

はあ、そうですか。

会話はそこで途切れ、男性は下山していった。

登りに使った野間神社からの登山道の他に、野間岳にはもうひとつ登山道がある。男性が言っていたのはそのもうひとつの登山道のことだろう。だが、神社に車を停めているので別の登山口へ降りると麓をぐるっと歩かなければならない。なので最初からピストンのつもりだ。やれやれ、大きなお世話だなと思いつつも、正月早々こんなところに登りに来ているどう見てもよそ者な私に親切に教えてくれたんだと思うとありがたくもある。

下山する前に地図を見てみると、もうひとつの登山道は登りに使った登山道から90度の角度で付いていた。180度ではない、90度だ。180度だと下山してから山裾を半周しなければならないが、90度なら4分の1歩くだけでいい。

行ってみるか。せっかく教えてくれたんだしな。

10分も下ると石の門はあった。うん、確かに石の門だ。よくあるものだといえばまあそうだけど、石が自然にこの形に組み合わさったのは不思議だといえば不思議でもある。

もうひとつの登山口に下山して駐車場まで舗装路を歩いていると、山頂の男性が運転する車とすれ違った。

すれ違いざまに目が合ったので、軽く会釈した。

男性も軽く会釈して走り去った。

2025年1月