ぐんまの弁当

旅行中は基本的にお店に入って食事するのだが、時間が厳しい時には弁当を買うこともある。そんな時は可能な限りコンビニやスーパーの弁当は避けて地場産の弁当を探す。この数年は群馬へ行くことが多く、群馬の弁当を何度も食べた。超有名なのからそうでもないのまで、なかなか魅力的な弁当がそろっている。

峠の釜飯

群馬で最も有名な弁当といえば、まちがいなく峠の釜飯だ。全国有名弁当ランキングがあれば、シウマイ弁当と一二を争うことになるだろう。食べたことある人も多いはずだ。だが、シウマイ弁当が神奈川県だと広く認識されているのに対して、悲しいことに峠の釜飯が群馬のものだと知らない人は意外と多い。

十数年ぶりに峠の釜飯を食べた。以前は、こういった和風の上品な食べ物の良さをまったく理解してなかったので、さえない弁当だなくらいにしか思わなかったのだが、今回は感動的に美味しく感じられた。すべてが上質で丁寧である。なぜおかずになっているのか理解できない栗や杏子までもが愛おしい。別添えの漬物類も手抜かりなく高品質だった。

問題は容器だ。陶器の釜はもてあます。ひとり分のご飯が炊けるとかで、いつかやってみようと思っても、なかなか実際にやることはない。十数年前にお土産でもらった峠の釜飯の容器は、十数年間一度も使われることなく我が家の台所にあり、つい先日処分したところだ。今回は躊躇なく捨てた。

だるま弁当

群馬で二番目に有名な弁当は、だるま弁当だろう。峠の釜飯ほどではないが、駅弁界隈では歴史ある有名弁当である。群馬らしく山の幸を中心にした、こちらも上品で上質な和風の弁当で、峠の釜飯を追随している。

問題はやはり容器である。だるま型の容器は、毒々しい赤色のプラスチック製だ。口の部分が開いていて貯金箱として使うことができるが、これを貯金箱にしたい人はあまりいないだろう。部屋にあるとかなり目立つし違和感もある。速攻で捨てるが吉だ。

雪を詰めて雪だるまを作るのは良い活用法だとは思うが、雪国に住んでいない限り、活用機会はせいぜい数年に一回くらいしかない。

鳥めし弁当

上記二つの弁当に比べると知名度は落ちるが、登利平の鳥めし弁当こそが群馬を代表する弁当だと言っても言い過ぎではない。群馬県内と埼玉北部に合わせて30以上の店舗があり、路面店にロードサイド店、商業施設内のテナント店と、あらゆる場所に出店している。観光客向けではなく、群馬県民御用達だ。そのため県外での知名度はいまひとつかもしれないが、地元の人々には親しまれている。

弁当の種類はいくつもあるが、鳥めしとしては竹か松の二種類になる。竹は胸肉のみ、松は胸肉ともも肉が半々だ。松を買いたくなるかもしれないが、おすすめするならシンプルかつ伝統の竹一択である。極限まで薄く切られた胸肉は、研ぎ澄まされて芸術的ですらある。

駐車場完備のロードサイド店があちこちで罠を張っているので、群馬からの帰り道にはどこかの店舗に捕まって、夕飯が鳥めしになってしまいがちである。

まいたけ弁当

まいたけ弁当はややマイナーだ。一般的には、かなりマイナーかもしれない。片品村の特産品でもあるので、尾瀬への行き帰りに目にすることもあるだろう。

ごはんの上には醤油で煮たまいたけ、後は申し訳程度の鶏肉やこんにゃくのシンプルな弁当だ。他の老舗弁当のように上質な食材を使ったり手の込んだ調理をしているわけではないものの、これぞ山の田舎のお弁当といった情緒にあふれている。

閉業してしまった店もあるが、製造販売している会社は他にもある。なかなか出会わないかもしれないので、見つけた時には買っておきたい。