夏休みは北アルプスへ Day2 – 不帰ノ嶮

ニ日目の朝、いまのところ天気は悪くない。今日は不帰ノ嶮を超える。

ご来光目当ての登山者が引けたあとの唐松岳は貸切だった。山頂でのんびりしてると、それまで雲に隠れていた剱岳が姿を表した。幸先いいな。

さて、あまりゆっくりしてもいられない。先へ進もう。

今回は八方から登り、唐松岳、白馬三山を経由して栂池へ下山する予定だ。がんばれば2日、がんばらなくても3日で歩ける距離だが、3泊4日で予定を組んだ。

勢いに任せてテント泊の予約を入れてしまったのもあるが、一日の行動時間を短く抑えておきたかったというのもある。

夏山では午後になると天候が崩れることが多いが、最近は気候変動の影響だろうか、その時間帯が早まっている気がする。だいたい昼頃にはすっかりガスの中だ。下手すると8時くらいから雲が上がってくる。早朝の良い時間帯に夏山を満喫するため、短い距離で区切ってきたのだ。

不帰ノ嶮は、その恐ろしげな名前と見た目の凶悪さに反して、穏やかな区間がほとんどである。何箇所かある岩場にはクサリが設えてある。

二峰からの下りは垂直に近く、足元を見るとヒヤッとするが、ここにもクサリはあり、岩場が階段状になっているので難しくはない。

一峰も超えて、あとはキレットから天狗の大下りを登るだけというところで小雨が落ちてきた。

早朝の青空はいつしか灰色の重たい雲に覆われ、気温も下がって風が出てきていたので、そろそろ降るかなとは感じていた。まだ朝の8時半だ。やはり天気の崩れは早い。

小笠原沖で発生した台風は、勢力を強めて日本に迫っている。明日か明後日には上陸するかもしれない。直前まで予報と睨めっこして悩んだが、ええいままよ!とやってきた。テント泊の予約をしてなければ、おそらく中止にしただろう。吉と出るか凶と出るかはわからない。だが、たぶん大丈夫だろうという根拠の無い楽観はあった。とりあえず、台風直撃で不帰ノ嶮を超えるハメにならずにすんだ。後はなんとかなるだろう。

天狗山荘に到着したのは、まだ午前11時だった。

周囲はガスに包まれている。テントを設営してしまえばもうすることもない。

暇に任せてスマホで漫画を読んでいたらバッテリーがなくなった。充電しようとしたら、なぜだかモバイルバッテリーが反応しない。おかしいな、満充電してきたはずなのだが…。

何回試しても反応しないので諦めた。残りの時間は山に浸れってことだろう。

漫画はいいとして、時計と地図も見れなくなるのは少々痛い。時間はカメラのメニューでわかるか。一般道を歩くだけだから、地図は無いなら無いでなんとかなる。

夕方には雨もやんだ。見晴らしのいいところまで登ると、正面には威風堂々とした鑓ヶ岳の姿があった。

つづく