ゆるゆるハイキング旅 – 鶏足山

昼ごはんを食べながら、さてどの山に登ろうかなと考える。登山地図のないエリアなので、適当な山を検索して登山道の有無を調べていく。

今週は益子に来た。特に用があったわけではない。午前中は町をぶらぶらし、早めの昼食をすませてから、午後は近場の低山に登る。こんなゆるゆるハイキング旅も悪くない。

鶏足山登山口には整備された広い駐車場があった。そして驚いたことに満車であった。地方の低山なんてだいたいは誰も登りはしないのだが、たまにこういった隠れた人気の山もある。そんな山に出会うと嬉しくなる。

駐車場の端に一台だけ停められるスペースを発見したので、そこへ駐車して出発した。

1時間も登ると、三角点のあるピークに出た。ピークと言っても樹林に囲まれた小さなスペースだ。何人かの登山者が休憩し、お昼ごはんを食べている。

ここが山頂かな?と思ったが、登山口にあった案内板によると、まだ先のようだ。なにせ、スマホで撮影しておいた案内板の絵地図だけが頼りである。とりあえず先へ進む。

しばらく下ってしばらく登ると見晴らしのよい場所に出た。うんうん、これなら山頂らしい。

だれもいないのでのんびりくつろぐ。いい午後だ。

絵地図によると、この先に鶏石というのがあるらしい、そこまで行ってみることにした。

歩き始めてすぐに護摩焚石というのがあったが、その後はどんどん下ってしまう。こんなに下ったら帰りがたいへんだなと思いつつもしかたなく下る。絵地図だと山頂のすぐ近くに描いてあったが、意外と遠いようだ。もしかしたらもう通り過ぎたのかもしれない。絵地図では距離感がまったくつかめない。

いいかげん下った頃に、ようやく鶏石に着いた。確かに見ようによっては鶏のトサカに見えなくもない。

ふむふむと納得し、来た道をもどる。三角点の広場からは、そのまま下山せずに焼森山まで歩いてみた。30分ほどで着いた焼森山の山頂では、御婦人がお二人、腰を下ろして世間話に花を咲かせていた。

話題は、ご主人の悪口から始まって、家族のことやら町内の噂やらなんやらかんやら、いかにもな内容だ。地元の人なのだろう、方言が混じっていてよくわからないのだが、だいたいの意味はわかる。別に盗み聞きをしているわけではない。そう広くもない山頂で盛り上がっているので、聞く気がなくても耳に入ってきてしまう。

いいな、と思った。

休日の午後に、地元の友人なのか姉妹なのかわからないが、連れ立って近場の山に登り、家族や親戚の噂話に花を咲かせるなんて。そもそも山登りっていうのは、こんな手頃で気軽なリクリエーションだったはずだ。

あちこちに遠征して山を食い散らかして歩く自分が、なんだか恥ずかしくなった。

2022年8月