愛鷹山の愛鷹山

富士山と太平洋のあいだに見えるギザギザの稜線、それが愛鷹山です。富士山ほどは目立たないけど、平野部からすっと立ち上がるその姿は人目を引きます。

かつては富士山同様の成層火山で、標高は2500mから2800mほどあったと推定されています。それが山体崩壊により現在の姿となりました。現在の最高点は1504mなので、実に1000m以上も崩壊したことになります。

富士山の六合目より上が崩れて消えたと想像してみてください。後には、火口の周りを大きくぐるっと取り巻いた広大な山塊が残ることとなります。そのちょっと小さい版が愛鷹山なのです。

愛鷹山の山頂は最高点の越前岳となっていますが、他にもいくつものピークがあります。

以前に越前岳から呼子岳、鋸岳、位牌岳と歩いたことがあります。崩壊地を行くわけですし、愛鷹山が活発に活動してた時代の火口近くも通るので、一部にたいへん危険な箇所もありました。

かつての大愛鷹山崩壊後の、これらのピークの総称が現在の愛鷹山であり、山頂は1504mの越前岳ですが、愛鷹山には愛鷹山という1188mのピークもあるから少々ややこしいです。八ヶ岳に八ヶ岳という名の、標高の低く中核部から離れたピークがあるみたいなものです。

愛鷹山に登ったのに愛鷹山には登ってないとは愛鷹山に登ったとは言い難い、というまぎらわしい理由で愛鷹山へ登りに行きました。愛鷹山へ行って愛鷹山にある愛鷹山に登るのです。

愛鷹山の山頂には愛鷹明神が祀られていました。さすが山の名を冠したピークだけのことはあります。信仰と標高は必ずしも一致しているわけではありません。最高地点信仰は現代のものですしね。

さらに先へ、位牌岳まで登りました。以前に反対側から来たピークです。今回はここまで、この先は恐ろしかったからやめておきます。

愛鷹山のこっち側とあっち側の稜線ルートをつないで下山しました。