Heart of the Okuchichibu

けっこうしばしば、つまんない山って言われちゃう甲武信ヶ岳。

確かに槍や穂高のような、だれが見てもひと目でわかる万人向けのわかりやすさはないけれど、味わい深い良い山です。

まあ、地味ではありますが。

甲武信の良さは、有名パティシエのオシャレなスイーツとは対極の、かめばかむほど味が出る酢昆布の味わい。

雁坂峠からの奥秩父主脈縦走路、戸渡尾根、国師ヶ岳からの主脈縦走路、千曲川源流の道、十文字峠からの岩綾地帯、どこから登ってもそれぞれの良さがあります。

つまんないって言う人は、おそらく戸渡尾根か千曲川源流の道でピストンしただけなのではと思います。それはきっと、山頂に達する最もイージーな手段として選ばれたルート。

ただ山頂に立つことだけを目的にして訪れると、甲武信ヶ岳は酸っぱい山かもしれません。ちょろっと嘗めただけでは、酢昆布の深い味わいは味わえませんから。

金峰山のような派手さもなく、雲取山のような明るさもなく、国師ヶ岳や三宝山や木賊山といった大きな山々に囲まれた、この地味な甲武信ヶ岳を百名山のひとつに選んだとは、深田久弥というのはなかなかセンスのある男です。

甲武信ヶ岳へ至る一般ルートは全て歩き、念願の鶏冠尾根でも登頂したので、あと残るのはひとつだけ。

ずっと行きたいと思ってるあのルートへ。いつか必ず。