美しい山と静かな湖 – 社山

透明な空。大気は清浄。最高の一日が約束された朝。

こんな日に山に登れるのは嬉しすぎる。それがあまり頻繁には来れない山域の初めて登る山だったりしたら、もう小躍りしたくなる。つまり今日だ。

中禅寺湖の東側から南側へと湖畔を歩いて行く。湖面のさざ波にゆらめく早朝の蒼い光が美しい。美しすぎる。もはやなにを見ても美しい。

湖の向こうには丸っこい男体山。美しい。美しすぎる。

岸辺を離れ、雪の林を突っ切り、稜線へ向かって直登していく。

樹林帯のすき間から山と湖が姿を現す。

稜線に出た。明るい稜線だ。気持ちの良い稜線だ。

最高じゃないか。これを最高と言わずして、なにをもって最高だと言えるのか。

こんな日があるから山はやめられない。毎回こんなだったらいいのにと思うけど、いやいやそれは違うぞと思い直す。だって、毎回必ずいい天気になるのなら、いい天気のありがたみが無くなっちゃうから。そのうち、いい天気にも飽きてしまうだろう。天気がどうなるかわからず、天気予報にヤキモキし、諦めたり突撃したり、予想外の雨に打たれたり、ダメだと思ってたけど青空が広がったり、そんないろいろがあるから楽しいんじゃん。雨の日もあれば晴れの日もある。だからいい。山も人生も。

空はどこまでも青く、稜線の雪はとても少なく、湖の向こうには男体山女峰山太郎山の男体一家が並んでいた。

うきうきしながら社山に登った。

スキップしたい気分だったけど、けっこうな急登のうえ凍結もしてるので普通に登った。

山頂だけはそれなりに積雪があった、といっても10センチくらい。みんなが言ってるけど、今年はどこも雪が少ないね。まあ、これはこれでこんな年もあるよねで終わりだけど、夏場の水不足は大丈夫かなとちょっと心配になる。

社山で折り返して来た道をもどり、登ってきた峠を通過して先へ進んだ。

けっこうな登り返しと、けっこうな下りと、さらに再びけっこうな登り返しを登って、半月山の展望台に着いた。

ここから見えるのは、絵葉書かカレンダーにしたいような端正で均整のとれた風景だ。

右手の男体山から、中央の白根山、そして左手の足尾山脈へと連なる山々。

遠くには富士山も見えている。

いいね。いいよね。最高じゃないか。

ここでこれが見れるか見れないか。それはやっぱりまったく違う。そして、いつでもこれが見れるわけではないってのが、見れたときの嬉しさを何倍にもしてくれる。だからいい。

半月山からも、登って下って登って下ってを何度も繰り返して進む。麓から眺めて、なだらかで楽勝だろうと予想してたらとんでもない。うんざりする登り返しの連続だった。

登って下ってを繰り返して、少しづつ標高を下げていく。

山の中なのに広々と平坦な土地になったら、そこが茶の木平だった。ここは登り下りがないから楽でいい。茶の木平の端っこからは、男体山がいっそう大きく目の前に広がっていた。

そこから一気に高度を下げると、中禅寺湖の畔りへ降りた。

寄り道してわざわざ二荒山神社まで行ったのに、閉店時間を過ぎていたので門は閉ざされていた。冬季は四時で閉店らしい。ホワイト企業だな。

それでもいちおう門の外から、世界の平和と自分の繁栄を願い、無事の登山のお礼をしておいた。