大地の息吹 – 阿蘇山

火山特有の荒々しい地形。

まるで日本じゃないみたい。いや、地球じゃないみたい。

阿蘇に来るのは何度目だろう。初めて来たのは高校の修学旅行だった。大人になってからも何回か来ている。しかし毎回、火口とその周り、せいぜい砂千里あたりまで歩いただけで、山頂を目指すのは今回が初めてだ。

地震と噴火の爪痕は、いまだ癒えていない。

廃止が決定したロープウェイは解体工事が始まっていた。駅の横の寺院は損傷が激しく、立入禁止で近づくことができない。閑散とした土産物屋に観光客の姿はほとんどなく、登山者がちらほらいるだけだった。

アリゾナ州のような、デューン砂の惑星のような景色の中を歩いていく。

ガレ沢の激しい登りを登ると稜線に出た。荒々しく、物悲しく、美しい風景だ。

ここが登山道だとわかっているからなんともないが、何も知らずにこんなところに放り出されたらずいぶん不安だろう。

稜線から見下ろす火口に噴煙が上がっていた。

阿蘇は、大地の息吹を感じる場所だ。自然はけっして優しくはない。だが、悪意もない。自然は、ただそこに存在しているだけだ。

南岳から中岳へ。

ときおりガスに巻かれて視界がなくなるが、しばらくするとまた青空が見えてくる。

中岳からは高岳へ向かう。

標高1592m、ここが阿蘇山の最高地点だ。

阿蘇はスケールが雄大だ。いや、雄大なんて言葉では表し切れない。異常な巨大さだ。

山頂から外輪山までの距離は12km以上ある。箱根山の5km、浅間山の3kmと比較しても、そのスケール感の差は歴然だ。阿蘇山のカルデラ内には普通に町があり、農地もあり、鉄道も走っている。

かつて阿蘇山は富士山よりも大きな山だった。一説には8000m級の山だったともいう。その阿蘇山が9万年前に大噴火したときには、九州の半分が焼き尽くされた。そんなパワーを秘めた山なのだ。神として崇められ、畏れられれのも頷けよう。

阿蘇には、地球のマグマがみなぎっている。

高岳からは天狗の舞台まで歩き、そこからぐるっと回って中岳へもどり、下山した。