ポテト入り焼きそばと子供洋食 – 群馬県 桐生市
ポテトといってもフライドポテトではない。ただの蒸したジャガイモだ。桐生や足利の焼きそばにはこのポテト、つまりはジャガイモが入っている。ソース好きでジャガイモ好きの北関東人にとって、焼きそばにジャガイモを加えるのは必然だったのだろう。ポテト入り焼きそばというネーミングもいい。ジャガイモでなくポテトと言うと、なんとなくハイカラな雰囲気がある。

栃木市あたりだとジャガイモの入った焼きそばはジャガイモ入り焼きそばという名前だ。ポテト入り焼きそばとどう違うのかというと、料理としてはまったく同じものである。だが、ポテト入り焼きそばとジャガイモ入り焼きそばは、その成立が微妙に違うのではないだろうか。
ジャガイモ入り焼きそばは、焼きそばにジャガイモを加えたものだ。それに対してポテト入り焼きそばは、子供洋食を焼きそば入りにアレンジしてできあがった。
子供洋食というのは、ジャガイモのソース炒めのことである。蒸したジャガイモをネギや干しエビと共にソースで炒めた食べ物だ。子供のおやつで、家庭でも作られるし屋台でも食べられたそうだ。どこが洋食なのかと思うが、ソースとジャガイモというのは昭和初期の子供達にとっては立派な洋食だったのだ。

この子供洋食が食べられるお店を探して桐生を訪れたが、残念ながらメニュー落ちしていた。やめてしまったのだろうか。
「やめたわけじゃないけど、ジャガイモの価格が高くなり過ぎて休んでる。焼きそばに入れるくらいならいいけど、子供洋食はジャガイモが主だから…」
話好きのおじいちゃん店主が続けて言う。
「ジャガイモが高くなったからといって、そんなに高い値段をつけるわけにもいかないし…。なにせ名前に子供なんて付いてるし…」
ちなみにポテト入り焼きそばは並盛り400円だ。おそらく子供洋食もそれくらいの価格だったのだろう。
「遠くから食べに来てくれる人もいるけど、そのたびに謝ってる…」
「桐生の名物だし、なんとかやりたいんだけどねえ…」
残念ながら子供洋食にはありつけなかったが、代わりにポテト入り焼きそばを食べた。

子供向けの屋台の駄菓子から発展して大人も食べるようになった食べ物には、お好み焼きやソース焼きそばがある。それ以外の大人料理になれなかった多数の子供料理は、その多くが消滅してしまったか、消滅寸前だ。もはや子供が駄菓子を好んで食べる時代でもない。
なんとか生きながらえていた子供洋食も、いままさに消えようとしてるのかもしれない。
2026年7月





