ラーメン大童のタンタン麺を食べて、タンタン麺とはなにかを考える – 栃木県 栃木市

ラーメン大童、栃木市内の住宅街にポツリとある昔ながらのラーメン屋だが、栃木市民で知らない者はいない有名店である。客層はローカルで、家族連れや年配者も多い。

メニューはシンプルだ。ラーメンとタンタン麺に、チャーシュー麺とチャーシュータンタン麺、あとは餃子とライスとチャーシュー皿盛りという潔さである。

夜にも営業しているので、登山の帰りに寄ることが多い。食べるのはいつもチャーシュータンタン麺に餃子5個だ。

スープは醤油味で、コクがあって酸味が強い。表面を覆う自家製のラー油に無数の胡麻が散りばめられている。チャーシューは自慢の炙り焼きだ。お土産に持ち帰る人も多い逸品である。なかなか独創的で味わい深い。

餃子も独特で、大ぶりで皮が厚い。野菜が主体の餡は皮と比べて有意に少なく、これは明らかに皮を食べさせる餃子である。

美味しい美味しいと食べていたのだが、ふと思った。これは果たしてタンタン麺なのだろうかと。

本場四川の担担麺は日本とは違って汁なしだが、汁なしのことはひとまず置いといて、今まで食べてきた日式タンタン麺について思いを巡らせた。タンタン麺とはどんな麺料理と定義されうるのだろう。

勝浦や小田原のように地域性のあるタンタン麺もあるが、個店ごとに見るとそれこそ千差万別、全国津々浦々でやりたい放題である。担々麺、担担麺、タンタン麺、タンタンメンと表記にも揺れがあり、中には坦々麺と漢字を間違ってる店まである。ここでは店の表記より読みやすさを優先して、ひとまず「タンタン麺」で統一しておくことにする。ちなみにラーメン大童は平仮名で「たんたんめん」だ。

タンタン麺と聞いて一般的にまず思い浮かぶのは、芝麻醤(あるいは練り胡麻)を加えたクリーミーで濃厚なスープだろう。だが、これは明らかに高級寄りである。世間には芝麻醤をまったく使用しないタンタン麺も多い。

高級中華レストランのタンタン麺が街場に降りてきたのが芝麻醤タンタン麺なら、ローカルタンタン麺はそれとは異なる経緯で発生したものだろう。情報も専門食材も乏しかった時代に、店主がイマジネーションと創意工夫で生み出したタンタン麺だ。勝浦や小田原だって、最初の店で生み出されたタンタン麺が周囲に伝播したものである。

辛いというのはタンタン麺に必要な条件のひとつだろう。だが辛ければタンタン麺というわけでもない。地獄ラーメンや蒙古タンメンはタンタン麺ではない。

肉味噌、あるいは挽肉を炒めたものが具にあるのは、タンタン麺らしさを示す記号になる。しかしこれも、辛くて挽肉が具になっていればタンタン麺かというと、台湾ラーメンという例外がすぐに浮かぶ。それに、いま目の前にしているのは、肉味噌ではなくチャーシューががっつり乗ったタンタン麺だ。

とはいえ、挽肉と青菜に代表されるシンプルな具にはタンタン麺らしさがある。確かに野菜たっぷりタンタン麺なんて想像できない。しかし世間には、イクラと和牛に数種類の謎の草を具にしたアーモンドタンタン麺なんてものもある。ここまで来ると、もはやなんでもありだ。

イクラと和牛のタンタン麺は、アーモンドを加えたクリーミーなスープで、辛味は全くなかった。申し訳程度に垂らしたラー油がタンタン麺としてのアイデンティティーなのだろう。確かにクリーミーな白いスープに浮かぶ赤いラー油はタンタン麺っぽい。まあ、ラー油を垂らせばタンタン麺というわけでもないし、元祖ニュータンタンメンのようなラー油を垂らす余地のない、大量の唐辛子でドロドロなタンタン麺だってある。

何をもってタンタン麺とするのか、あるいはタンタン麺をタンタン麺たらしめている必要十分条件とはなんだろうか、巷に存在する多種多様なタンタン麺と、タンタン麺っぽいけどタンタン麺ではない様々な麺料理を食べれば食べるほどわからなくなっていく。

そこで流行りのChat GPTにタンタン麺の定義を尋ねてみたところ、辛味とかラー油とか芝麻醤とか肉味噌とか、想定通りの答えが返ってきた。ChatGPTが掲げるタンタン麺の条件にいちいち例外をぶつけて否定していくと、最後には苦しまぎれに、タンタン麺とは「世界観」であると言い放っていた。

タンタン麺には必要条件も十分条件もない。店がこれはタンタン麺だと言って提供し、客がこれはタンタン麺だと思って食べれば、それはタンタン麺となる。

タンタン麺とは、店と客とが作り出す共同幻想なのである。