あの頂きの、その先へ – 甲斐駒ヶ岳
一年ぶりの甲斐駒ヶ岳。
ここ数年ずっと、この時期に甲斐駒に登っている。
昨年は日向八丁尾根から、一昨年は黒戸尾根から、その前の年は北沢峠から。
そのどれもが、甲斐駒が目的で甲斐駒を目指して登ってきた。
しかし、今回はそうではない。
ここは目的地ではなく、スタート地点なのである。
この稜線をあそこまで。
六合目小屋も烏帽子岳分岐も越えて、その先の未知の領域へ。
あちら側へ踏み出すと、とたんに道は不明瞭になった。
踏み跡も薄くマークもなく、どこをどう歩くかは、自分自身が決めることになる。
山頂にはあんなに大勢の登山者がいたのに、こちらへは誰も来ない。
百名山の喧騒は、ここまで届かない。
静かで景色も良く、甲斐駒を独り占めして歩く。
この稜線はおれのもの。