TOKYO八王子名山縦走記 – 千手山 / 盆前山 / 恩方山 / 高留沢ノ頭
先週やけくそで登った初沢山はTOKYO八王子名山のひとつだった。TOKYO八王子名山ってなんだそれ?と思うかもしれないが、そういうものがあるのだ。読んで字の如く、東京八王子市の名山をリストアップしたものだ。名称の頭に「TOKYO」となぜかアルファベットで付け加えるところが、なかなかの八王子センスである。
八王子に名山なんてあるのか?と思うかもしれないが、いちおうある。高尾山や陣馬山は名山と言ってもいいだろう。草戸山や今熊山もギリギリ名山だ。あとは?景信山と城山は入れてもいいか。中沢山や大洞山に堂所山、醍醐丸あたりは、都内近郊の登山愛好者なら歩いたことのある人も多いはずだ。
これで初沢山を入れて11山。実際にTOKYO八王子名山がいくつあるのか確認すると、なんと36山もある。残りの25山のうち、名山とは知らずに通り過ぎてる山もいくつかあるが、こんなとこ普通は登らないだろって山も多い。こんなマニアックな尾根を歩きそうなのは、友人知人を見渡しても二人しか思い浮かばない。
自分はいくつ登ってるのか数えてみたら24山だった。まあまあヘンな尾根を歩いてるほうだと思うけど、それでも3分の1は未踏だ。残りの山は、特別な目的がなければ行かなそうな山ばかりである。せっかくだから残りも登ってみよう。なにせ八王子(の隣の)市民なんだから、地元の名山に登らずして登山を愛好しているとは言いがたい。
なるべく一度にたくさん登れるような縦走ルートを考えた。まずは、高尾駅からバスで大久保というバス停まで行き、千手山から盆前山、恩方山、高留沢ノ頭と縦走して夕焼け小焼けの里へ下山する。これで四山クリアだ。
さて、前置きが長くなったが出発だ。ここまで読んで付いてきてる人はいないような気もするが、先を続ける。
高尾駅で陣場高原行きの始発バスを待つ。小雨がパラつくあいにくの天気だが、マイナー低山に登るにはうってつけだ。これなら、こんな良い天気の日に俺は一体なにをしてるんだ…と疑問が浮かぶこともない。
天気が悪いので他に登山者はいなかったものの、どこかの中学の坊主頭の野球部がわんさかバスを待っていた。野球部向けの臨時バスが用意され、そのバスが大久保行きだったので、私も坊主頭の中坊たちとともにバスに乗った。
私と野球部は終点の大久保で降りた。野球部はバス停近くの学校へ向かっていく。身支度を整えていると、バス会社の社員さんに次に来る陣場高原行きに乗車するか尋ねられた。私の目的地もここであることを告げると、西東京バスの車掌さんの頭上にはてなマークが点滅していた。まあ、いつものことだ。

浄福寺という立派なお寺から山に入る。最初の目的地の千手山は、この浄福寺の裏山になる。だが、低山あるあるでどこから入山したらいいのかさっぱりわからない。日本百名山なら至れり尽くせりの案内板があるが、TOKYO八王子名山にそんなものはない。
地形図と地形と周囲の様子を見極めつつ、お墓の上から山道に入った。なんとなくどこから入山したらいいのかわかるのは、いくつものマイナー低山に登ってきて身に付けた、他では全く役に立たないスキルだ。

千手山まではあっという間だった。というか、ここが千手山でいいのだろうか。山名板には浄福寺城址とある。
うろうろしていると、千手山と記された山名板も見つけた。よしよし、一山ゲットだ。

ここからは稜線を歩いていく。いちおうバリエーションルートなのかもしれないが、普通に歩きやすい。踏跡は整っているし崩れているような箇所もない。地味にアップダウンがあるが、標高が低いのでたいしたこともない。
天神山、興慶寺山というピークを超えていく。ピークといっても、なんの変哲も展望もない稜線上のコブだ。これらの山はTOKYO八王子名山にすらなれなかったかわいそうな山である。

そうして力石峠に辿り着くと、法面に行く手を阻まれた。急傾斜で降りられない。高さもあるので下を見てるとクラクラする。ここでよろけて落ちたら即死だ。これは詰んだかもしれない。
諦めきれずに法面のへりを歩いていくと、降りられそうな場所があった。よかった。とりあえず舗装路へ降りた。

凍りついた舗装路を少し歩いて次は盆前山へ登る。こちらも歩きやすい山道だ。順調に標高を上げていく。
だんだん山らしくなってきた。いや、ここまでもいちおう山なのだけど。

盆前山から恩方山へ。
それにしても飽きてきた。変化に乏しく、風景が変わらなさ過ぎる。目的の山をうっかり通り過ぎないようにするのが唯一の注意点だ。

高留沢ノ頭が最終目的地であり、今日の最高地点でもある。
ここから一気に夕焼け小焼けへ下山だ。

天気の悪い土曜日の夕焼け小焼けは、ひっそり静かだった。そういえば今日一日ひとりも登山者に会ってない。

バスに乗り高尾駅へ向かうと、途中の大久保から朝の中坊野球部がどかどかと乗り込んできた。見覚えのある顔が何人もいる。向こうもこちらに気づいただろう。なにせ野球部の団体バスにひとりで乗っていた登山のおじさんだからな。
天気の悪い週末の、なかなか有意義な一日だった。
2026年2月





