旧山形県庁舎
山形市内中心部の大通りを進んでいくと、北の端で壮麗な西洋建築に行き当たる。旧山形県庁舎だ。
明治期に建設された初代の県庁舎が消失した後、大正期に再建された二代目の県庁舎で、昭和50年まで現役で使用されていた。現在は重要文化財に指定されており、文翔館という名で郷土資料館として開放されている。

入館無料なので入ってみた。建物裏手には無料の駐車場もある。

展示は特に見るものも無かったが、建物自体は素晴らしい。こういった西洋に追いつけ追い越せ時代の西洋建築には心動かされるものがある。日本人がちょっと無理して頑張っていた時代の証だ。

2階のバルコニーに出ると、庁舎前の広場の向こうに市内中心部が見渡せた。この眺めには既視感がある。そうだ、マイソールのマハラジャ宮殿から見た眺めそのものだ。
繁栄する支配地、広場を埋め尽くす臣民。この時代、県知事は王様だったのだ。ここは日本だから殿様か。

現代の県庁舎はどんなだろうと調べてみると、市の外れの高速道路インター近くの無機質な16階建てビルだった。
なんともつまらないではないか。機能性を追求したのかもしれないが、統治とは機能性だけで完結するものではない。そこには浪漫が必要だ。

西洋列強に並ばんとする闘志と熱量の溢れていた時代、県知事が王様だった時代。庁舎前の広場を臣民が埋め尽くした時代、国が発展していくと信じられた時代。
しらけた現代を生きる身には、そんな時代が羨ましく憧れる。
2025年7月






