皿うどん

初めて皿うどんを食べたのは、高校の修学旅行で九州を訪れた時だった。長崎での自由時間に数人で中華料理店に入り、ちゃんぽんと皿うどんを食べまくったのを覚えている。

当時はまだ一般的なメニューではなく、それまで皿うどんという食べ物を知らなかった。初めて目にする皿うどんは、名前から想像するのとは違い、パリッと揚げられた極細麺に、肉や魚介と野菜の旨煮あんがかけられていた。

食べてみると、これが実に美味しい。世の中にはこんな美味しい食べ物があったのかと感動し、夢中になって食べた。

その頃アルバイトしていた中華料理店に皿うどんはなかったが、近所の別の店にはメニューにあることを知り、バイトが終わるとよく食べに行った。皿うどんは私の大好きな食べ物のひとつになっていた。

大人になってからの長崎旅行で本場の皿うどんを食べようと店に入り、そこで初めて皿うどんには細麺と太麺があることを知った。

細麺がいつも食べてるパリパリ麺で、太麺はちゃんぽん麺を使ったものだった。中華鍋で焼き付けたちゃんぽん麺に旨煮あんがかけられていた。

これはこれで好きだ。九州以外ではほとんどお目にかかれないが、九州ではどこでも太麺と細麺がある。リンガーハットにだってある。

皿うどんの発祥を考えてみるに、ちゃんぽん麺を流用した太麺皿うどんが初期型なのは間違いない。そこからどういう経緯かはわからないが細麺皿うどんが発生し、いまや全国的にはそちらの方がメジャーである。細麺皿うどんは比較的最近のもので、昭和の中頃に出てきたものだという話も聞いた。

地域によっては、細麺と太麺の区別がなく、皿うどんというと有無を言わさず太麺で出てくるところもあるらしい。そういう店の細麺皿うどんには全く別の名前が付けられているという。

また、ちゃんぽん麺を具材と炒めてスープを注ぎ、麺にスープを吸わせた、九州の他地域では焼きちゃんぽんとも呼ばれているタイプもある。これはさらに古い形態かもしれない。

太麺の存在以外にも、本場の皿うどんには他ではない特徴がある。

皿うどんの餡はほのかに甘く、酢と芥子ではなくソースをかけて食べるのが普通だ。皿うどん専用の金蝶ソースなるものも販売されている。

古い店のメニューには「そぼろ皿うどん」や「とり皿うどん」といった聴き慣れないものがあったりもする。

九州を訪れるのは年末年始なので、行ってみたいお店は軒並み休業中なのが残念でならない。

いつかしばらく滞在して、本場の皿うどんを食べまくってみたい。