一陣の風となる – 会津駒ヶ岳
長く急で退屈な樹林帯の急登を登り切ると、そこには別世界が広がっていました。
会津駒ヶ岳の山頂に広がる高層湿原。
想像以上にメルヘンな世界。
ほんの少し秋の気配の湿原をひとり歩きます。
ひとりで歩いていると、心の扉が開いて様々な想いが溢れ出してきます。
いろんなこと、たいていは嫌なことや腹が立ったことが、次々と心に浮かんできます。
でも不思議と意識は冷静で激しい感情にはなりません。
ただ淡々と溢れ出してくる様々な想い。
山と向き合うのは自分と向き合うこと。
心の扉を開いて溜まった想いを放散すると、だんだん心が透明になってきます。
交互に繰り出す足はしだいに無意識の動作になり、体の境界線があいまいになって周囲の風景に溶け出していくよう。
このときぼくは一陣の風となり、稜線を吹き抜けていくのです。
と、クサいこと書いてますが、この日は帰り道でピタッと足が止まりました。その場にへたり込んでなかなか動けません。狭い登山道の両側は藪か湿原なのでゆっくり休憩するスペースもありません。
ようやくたどり着いた大津岐峠の、少しばかりの平らな場所に倒れるように寝転んで眠りました。
どうやら睡眠不足だったよう。
睡眠不足だと山はキツいです。お気をつけください。