讃岐うどんと和解せよ

初めて讃岐うどんを食べたのは学生時代の四国旅行でだった。当時の讃岐うどんは現在のようにメジャーではなく、県外で食べられるところは多くはなかったのだ。

初めて本場の讃岐うどんを食べたとき、するする入る喉越しの良さや、むちむちした弾力のある腰に感動し、世の中にはこんなに美味しいうどんが存在してたのか!と夢中になったのを覚えている。

その後、讃岐うどんブームが到来し、有名店には長蛇の列ができるようになった。県外にも讃岐うどんを標榜するお店が増え、ついには全国チェーン店が出現した。讃岐うどんを巡る狂想曲は映画にもなった。

讃岐うどんがあまりにも美味し過ぎたため、讃岐にあらずんばうどんにあらずのような風潮も生まれてしまった。すなわち、腰が強く喉越し良いうどんこそが美味しいうどんなのだと。

ちょっと待てよと思う。柔らかくふわふわで、つゆを吸って膨らんだ牧のうどんは最高じゃないか。腰とは無縁の無骨な固さで、喉越しを無視しているので咥えて噛み切るしか無い吉田のうどんも最高だ。

讃岐うどん至上主義に対する反発心から、讃岐ばかりをもてはやす世間の風潮とはいつしか距離を置くようになっていた。

今回の四国旅行では丸亀坂出周辺で一日時間ができたので、学生時代以来の本場の讃岐うどんを食べることにした。

本場で食べる讃岐うどんには本場感がある。席に着いて注文するレストランスタイルもあるにはあるが、多くはセルフまたは半セルフの、いかにもなお店である。

半セルフというのは、出来上がったうどんを受け取り、自分で薬味を入れ、天ぷらやいなり寿司などのサイドディッシュを皿に取ってから会計する方式である。讃岐うどんのチェーン店でも採用しているから、馴染みのあるスタイルだろう。これに対してセルフというのは、自らうどんを茹で、つゆをかける。中にはネギまでセルフで切らせるところもある。圧倒的なディープ感だ。

うどんの食べ方も様々だ。かけ、ぶっかけ、釜揚げ、釜玉、湯だめ、ざる、生じょうゆといったところが主なメニューだろうか。肉うどんやカレーうどん、冬場にはしっぽくうどんといった変わりうどんもある。

サイドメニューは、おにぎり、いなり寿司、かやくごはんといった炭水化物ものや各種天ぷらの他に、おでんを置いてる店が多い。

讃岐うどん屋のおでんを初めて食べたのだが、アゴ出汁のつゆで煮込んだおでんは新鮮な美味しさだった。合わせる味噌も悪くない。今回の新たな発見である。

うどん自体はもちろん美味しい。結局、朝昼晩と三回うどんを食べた。

また、本場の讃岐うどんを食べに来たい。その前に東京でも食べてみよう。

私は讃岐うどんと和解したのだ。