水と緑の惑星 – 川苔山 / エビ小屋山 / 赤杭山

とろっとした空気が全身にまとわりつき、まるで泳ぐようにして進む。あらゆる毛穴から絶え間なく汗が吹き出し、皮膚を伝って流れる。首に巻いたタオルを絞ると、雑巾を絞ったかのように汗が流れ落ちた。

尋常でない湿気だ。雨模様の大気は多量の水分を含んで白く靄っている。気温は高く風は無い。蒸気サウナに入ってるみたいだ。ただただ不快である。不快指数は限りなく100%に近い。

こんな日でも川苔山までは数人の登山者がいたが、古里への縦走路には誰も入ってこなかった。滝汗を流してひとり歩く。

縦走路を外れてひとつ目の目的地、エビ小屋山に向かった。地図で見つけてから、行ってみたいと思ってたピークだ。そしてそこは想像した通りの、樹林に囲まれた展望の無い山頂だった。

ごくごくごくと水を飲む。体内に取り込んだ水分は、たちまち汗となり流れ出す。大地に落ちた汗の雫は、水蒸気として大気中に放出され、やがて雲となり雨を降らせる。人も、この星のめぐりめぐる水循環の過程に組み込まれている。

縦走路にもどり、先へ進む。まだまだ先は長い。ここを歩く人は多くはないのだろう。登山道はやや荒れ気味で、藪になっている箇所もあった。

不快なのは不快だが、こんな山も悪くない。地球が水の惑星だということを体感できるから。水と緑の惑星だ。

緑の山には水が溢れている。沢水にタオルを浸し、固く絞って顔を拭った。ひんやりとして気持ちいい。上昇した体温がいくらか下がる。人は水なしでは生存できない。恵の水であり、命の水だ。

二つ目の目的地、赤杭山に到着した。やはりここも展望の無い樹林帯の山頂だった。湿気がひどくジメジメしている。でもこれこそが、自然の豊かさの証しでもある。

緑の山は生命の喜びに満ちている。