青空と雪と丸くて黄色いぽあぽあした花 – ミツバ岳

山にも旬がある。

もちろん、どんな山だって一年中いつ登っても楽しめるわけだが、その山に登るのにとりわけ適した季節というのはある。

丹沢のミツバ岳なら春だ。むしろ、春以外だと訪れる人はほとんどいないだろう。

ミツバ岳という俗称の元となったミツマタ畑の花がいっせいに咲き誇り、茶色い山が華やかな黄色に染められる。いまがまさにその季節だ。

急登を登っていくとそこここに、丸くて黄色いぽあぽあした花をつけたミツマタの木が植わっている。

汗をだらだら流して着いた山頂は、広々としていてミツマタでいっぱいだった。ミツマタの花の甘い香りが、あたり一面に淡く立ち込めている。

丸くて黄色い花に、前夜の雪がのっかっていて、まるで砂糖の帽子をかぶった可愛いい洋菓子のよう。

だれも見てなければ、ひとつくらい食べてみたかった。

季節外れの降雪は、思いもしなかった景色を見せてくれた。青空と雪と丸くて黄色いぽあぽあした花。

こういう予想外の出会いがあるから、どんな時でもとりあえず山には登っておくべきだよなと思う。