日本のアリゾナ – 鹿岳
見えた。あれだ。あれが鹿岳だ。かっこいいじゃないか。
鹿岳…名前だけは知っていたが、有名山とは違って写真で見たこともなかった。初めて見るその姿は、なんだかアリゾナ州あたりの岩峰のようでもあった。
西上州にはかっこいい山が多い。
妙義山に荒船山、立岩などなど。そそり立つ奇怪な山容に、あんなとこ登れないだろと尻込みするが、もしあそこに登れるのなら登りたいとも思わせる。そんな山々ばかりだ。
西上州では一般登山道でも簡単ではない。登山地図では実線ルートだからと、他地域と同じ感覚で登れば痛い目に合うだろう。
鹿岳の手前の四ツ又山へも、最初に登ろうとした風早尾根は登山口ですでに道が荒れ過ぎていて撤退し、比較的整備されている大久保へ移動して登ったのであった。
四ツ又山から鹿岳の登山道もザレてたり崩れてたりもしたのだが、このあたりではまだ整備されている方だった。
鹿岳の一ノ岳から二ノ岳へと移り、山頂の先の岩峰の上で大休止した。
天気が良過ぎて少々暑いが、なかなかの展望である。
鹿岳から先の登山道はひどかった。
尾根が分岐しているところでは、間違った方へはっきりと踏み跡が付いていて、普通にそのまま歩いて行くと、にっちもさっちも行かない岩場に吸い込まれていく。
正しい尾根に乗ろうとしてもルートは藪で隠れていて、どこをどう歩いたら正規の尾根に乗れるのかわからず彷徨う。
ようやくのことで正しい尾根に乗り尾根上を進んでいくが、尾根を外れる下降点からは、どう見ても道には見えない崩れる崖を、立木に捕まりながら下りていくことになる。
まったくこんな道を一般ルートとしてしまう西上州は、だからこそおもしろいのであった。