イミズスタンの旅

せっかくの四連休なのに天気は良くない。山にも登りたいけど悪天候の四日間はちょっと辛い。どうせならこんなときじゃなければ行けないとこへ行きたい。さて、どうしようと悩んでるときに閃いた。

そうだ!イミズスタンへ行こう!

富山県射水市、人はこの地をイミズスタンと呼ぶ。

「○○スタン」というのは「○○の土地」という意味で、元は古代ペルシャ語らしいので、そのあたりの西アジアや中央アジア一帯でよく使われている。パキスタンやアフガニスタンみたいな国名だけでなく、バロチスタンやクルディスタンのように、地域を表したり○○人の住む土地という意味でも用いられる。

で、イミズスタン。

これはまあ、この地にパキスタン人が多く住むことからそう呼ぶようになった、一種のシャレですな。国内には他にもヤシオスタンなんてとこもある。

中古車販売で稼いでいたパキスタン人は仕事上必要な日本各地に居住していて、射水市はロシア向け輸出の拠点だった。

だった、と過去形なのは、ロシア向け中古車輸出はプーチンが規制したせいで下火だからなのだが、この地に根付いたパキスタン人コミュニティーは健在なのである。商売熱心な彼らだから、なにがしかで生計を立てているのだろう。

そんなパキスタン人コミュニティーのある地には、彼ら向けのレストランが営業している。食に規制の多いイスラム教徒だから、日本人のように節操なくなんでも食べるってわけにもいかない。

昔々、バングラデシュ人やイラン人がノービザで入国して働いてた頃は、御徒町の安アパートに固まって住んで、自分たちで調達した食材を料理していたが、いまでは専用レストランだ。なんというか、時の流れを感じる。

パキスタン人が多いとはいえ、バングラデシュ人やインドネシア人など他の国のイスラム教徒もやってくる。

ムスリムはムスリムであるというただその一点だけで親しくなれるので、そういうところは羨ましいなと思うこともある。いやそれより、富山にそんなに多くのイスラム教徒が住んでいることも驚きだ。当然といえば当然だがモスクもある。

ちょっと働いてお金を貯めたら独立して自分の店を出すのがわりと普通な彼らなので、パキスタン料理店も乱立している。

それらしき店は、この地域に六店あった。

白エビにもホタルイカにも浮気せず、昼夜と続けて三日間イミズスタンで食事した。どの店も個性的で、ガチのパキスタン料理からインドっぽい料理や、はたまた東京でも食べられないバルティスタン料理を出すお店まで、飽きずに美味しく食べることができた。

ひとりでは食べられる量に限界があり、食べてみたかったけど食べられなかったメニューも多い。親しくなったお店の人に「また来るよ〜」と軽々しく言ったこともあり、機会をつくって再訪したいなと思っている。