庄内、夏の味覚 – 野菜編

庄内には在来野菜が数多く残っている。

明治維新で幕府側に付いた庄内藩は、近代化を後回しにされたために在来種が多く残ったという説があるが、明治新政府のいやがらせが、今では立派な伝統資源となっているのだ。

だだちゃ豆

庄内の在来種で全国的に最も知られているのはだだちゃ豆だろう。ねっとりして味の濃いだだちゃ豆は、他の枝豆とは一線を画している。

だだちゃ豆はお盆明けから8月末の短い期間にしか収穫できない。現代では品種改良された早稲のだだちゃ豆が7月から収穫できるが、枝豆に異常な執念を燃やす庄内人は、お盆過ぎのだだちゃ豆でないとイマイチだと言う。

鶴岡の小料理屋で早稲のだだちゃ豆を食べて、そのあまりの美味しさに感激したのだが、小料理屋の女将さんは「売っておいてこんなこと言うのもなんだけど、今の時期はまだ美味しくないのよね」と言っていた。庄内人ではない私には、その微細な違いはわからない。早稲だろうが本豆だろうが、どちらもとても美味しい。

東京のスーパーでもだだちゃ豆を売っていることがあるが、あれはイマイチ美味しくない。枝豆は収穫してからできる限り早急に調理しないと鮮度が落ちてしまう。少しでも新鮮な枝豆を市場で仕入れるための女将さんの執念はなかなかだった。

だだちゃ豆の味噌汁

だだちゃ豆は味噌汁にもなる。一度飲んでみたいと思っているのだが、外食で食べるようなものではないらしく、今だにお目にかかったことはない。そこで自分で作ってみた。

だだちゃ豆を鞘ごと茹でて味噌を溶くだけなのだが、だだちゃ豆からはたっぷり出汁が出る。自分で作ってわかったが、これは確かに店では提供しづらいだろう。

だだちゃ豆と水を1:1程度の割合で茹でるので、一杯の味噌汁にお椀一杯のだだちゃ豆が必要になる。柔らかくなるまで茹でただだちゃ豆は、枝豆として売り物にするわけにもいかない。これでは原価的に合わないだろう。規格外のクズ豆がたくさん手に入る農家の人たちの味噌汁なのかもしれない。

鵜渡川原きゅうり

一般的なきゅうりとは見た目からして違って、鵜渡川原きゅうりは小さくてずんぐりしている。だが、味はもっと違う。何も知らずに初めて食べた時は驚いた。苦いのだ。かなりはっきり苦い。それは嫌な苦さではなく、きゅうりの瑞々しさとあいまって、さわやかな苦さだった。

酒田市内の限られた地区でしか生産されておらず、収穫後に鮮度が落ちるのが非常に早いため、他の地域に出回ることはない。まさに幻のきゅうりだ。交雑を避けるために栽培は難しく、生産者も高齢化してるので、本物の幻になってしまうのではないかと気が気ではない。

鵜渡川原きゅうりの辛子漬け

さっぱりした苦味の塩漬けもいいが、辛子漬けもとてもいい。苦味と塩味に辛子のつんとした辛さと砂糖のほの甘さが加わり、きゅうりの瑞々しさがまとめる。

きゅうりの中でも特異な美味しさを持つ鵜渡川原きゅうりを、きゅうりの最も美味しい食べ方の辛子漬けで食べる。世界にこんな素晴らしいきゅうりの漬物が存在する奇跡。

いずれにせよ鵜渡川原きゅうりは夏の酒田では外せない食材だ。

メロン子

メロンの果実を大きく成熟させるために間引いた幼いメロン、それがメロン子だ。庄内ではこの摘果メロンが野菜として流通している。きゅうりと同様に浅漬けや辛子漬けで食べることが多いようだ。

メロンほどの甘味があるわけではないが、ほのかに甘い。そして苦味もある。きゅうりほど瑞々しくはないが、きゅうりより身がしっかりしていて、食感はコリコリしている。

民田なす

民田なすは鶴岡市民田で300年以上前から栽培されている伝統野菜だ。ぷくりと膨らんだ小粒の丸茄子である。

皮がしっかりしていて身もしまっており、漬物に向いている。浅漬けや粕漬け、辛子漬けにして食べる。

民田なすに限らず、庄内人は小茄子が大好きだ。夏になると小茄子の漬物が居酒屋メニューに登場する。

夏にしか登場しないところが、季節感があってとてもよい。

おかひじき

おかひじきは東京のスーパーでも売っている。だが、元々は庄内海岸に自生していた在来種だ。江戸時代に最上川の舟運で種が内陸部に伝わって栽培が広まった。今では置賜地方がおかひじきの主要な産地となっている。

庄内の在来種だが置賜の野菜のイメージが強いのか、庄内の居酒屋で見かける機会はあまり多くはない。