石川県の郷土料理 その2 – かぶら寿し / こんか漬け / 粕漬け / ふぐの子

かぶら寿しも金沢を代表する郷土料理のひとつだ。カブにブリを挟んで米麹で乳酸発酵させた「なれずし」の一種だが、寿司と言っても米は使っておらず、どちらかというと漬物に近い。

ブリもカブも高級品なので、かぶら寿しもまあまあいい値段がする。そのためニシンとダイコンで作った大根寿しも広く食べられている。

長く厳し冬を乗り切るための保存食も発達している。魚介類を糠漬けにしたこんか漬けは、海が荒れて漁に出られない冬の間の貴重なタンパク源だった。

こんか漬けにする魚の代表はサバだ。サバの糠漬けというと若狭湾のへしこがよく知られているが、へしことこんか漬けは呼び名が違っても同一のものになる。

サバの他はイワシやフグもこんか漬けにする。いずれも保存食だったためかなりしょっぱく、少量を酒の肴にするか米飯とともに食べるのがよいだろう。

米糠で漬けたこんか漬け以外に粕漬けもよく食べられており、こちらの方がマイルドで食べやすいかもしれない。

ふぐの子というのは、ふぐの卵巣の糠漬けのことだ。ふぐの卵巣といえば肝臓とともに猛毒の部位だが、これを無毒化して食品にしている。

まずは卵巣を塩漬けにして一年間、その後は糠漬けにして毎日魚醤を注いで二年間、こうして無毒化されたふぐの子ができあがるという。なぜにそこまでして猛毒の卵巣を食べようとしたのか。江戸時代にはすでに食べられていたらしいが、そもそもなぜこのような製法を試みたのだろか。

多量の塩で漬けるため強烈にしょっぱく、たくさんは食べられない。珍味ではあるが、酒の肴よりお茶漬けのほうがよさそうだ。

なぜこの製法で無毒化されるのか、その理由は科学的に解明されていないという。そのため現代でも木桶を使って江戸時代とまったく同じ作り方をしている。不思議な食品だが、過去にふぐの子での死亡事故は報告されていないそうだ。

全国でも石川県の特定の業者だけに製造が許可されているふぐの子は珍味中の珍味だろう。