木の芽煮
鞍馬寺の門前に軒を連ねる土産屋では、昔ながらの建物で昔ながらの土産を並べている。
土産屋の主力商品は、鞍馬名物の木の芽煮だ。木の芽煮というのは、細かく刻んだ昆布に山椒の実と葉を加え、真っ黒になるまで醤油で煮込んだ佃煮である。
山深い鞍馬の地で昆布の佃煮とは不思議な気もするが、鞍馬は鯖街道沿いにあり、塩した鯖とともに干した昆布も集落内の街道を通って京へと運ばれていたのである。
古来から鞍馬では山菜や木の子の塩漬けは貴重な保存食であった。鞍馬寺に預けられていた牛若丸も食べていたという。明治時代に、これに昆布を加えて醤油で煮込み、鞍馬寺への参拝客に売り始めたところ、名物となって今に至る。
どの店も山菜や木の子の数種類の佃煮を商っているが、最もポピュラーなのはやはり昆布と山椒の木の芽煮だ。
そのままで酒の肴にしてもよし、熱々のご飯のお供にしてもよし、お茶漬けにしてもよしである。