奥多摩のバリエーション尾根をのんびり歩く – 天地山 / 江戸小屋山 / 九竜山
思ったよりもずっとちゃんとした道だ。ホッとした。
初めてのバリエーションルートを歩く前は緊張する。ルートの情報がほとんど無いとなるとなおさらだ。しかし歩いてみればだいたいはなんとかなる。通行不能で引き返すこともなくはないが、にっちもさっちもいかなくなるようなことには、まずならない。
奥多摩駅から多摩川沿いを下流へと歩き、海沢大橋で右に曲がると集落に入った。標高が高くて川沿いの道からは見えないので、こんなところに集落があるとは知らなかった。集落を抜けて登っていく舗装路を進み、舗装路が終わるところで山道に入った。
それにしても歩きやすい道だ。以前は登山道だったのだろうか、一般ルートだと言っても差し支えない。適度に荒れてたり、踏跡が消えてたりするほうが楽しいんだけどなと、出発前の不安はどこへやら贅沢な不満が心に浮かぶ。
特段の苦労もなく天地山に着いた。特になんということもない山頂だが来てみたかったのだ。猫の額ほどの山頂を取り囲む木々の切れ間から、ちょうど先日歩いた天目山から酉谷山までの稜線が見えた。
天地山を後にして、さらに尾根を登っていく。驚いたことに下ってくる登山者とすれ違った。さらに男女の二人組ともすれ違った。いったいどこから歩いてきたのだろう。そしてなぜこんなところを歩いているのだろう。まったく世の中には変わった人がいるものだ。
さらに登っていくと一般ルートに合流する。奥多摩から御岳山へ向かう縦走路の途中の鋸山の手前あたりだ。思った通りのところに出られると、やったね感があるのだが、これだけ明瞭なルートなら造作もない。
大ダワを超えて鞘口山までは一般ルートを歩いた。ここまでの道も歩きやすいとは思ったが、一般ルートは別天地だった。道幅は広く、完全に整備されている。それにしても最近のメジャー登山道は、あまりにも整備され過ぎではないだろうか。これでは山を登ってる気分になり難い。まるで公園を歩いているみたいだ。
鞘口山で一般ルートを外れて江戸小屋尾根に入った。こちらも尾根に沿ってはっきりと踏跡が付いていて迷うこともない。
江戸小屋山を過ぎると、尾根の左側が伐採されていて展望がある。遠くに見えるのは、大菩薩嶺から黒川鶏冠山への稜線だ。
後方には立派な御前山が聳えている。
九竜山を超えて、見晴らしの良いところでお昼ごはんにした。あとは下山するだけだから、時間はたっぷりある。
麓が近づいてくると、踏跡が消えたり、逆に踏跡が錯綜したりし始めた。ふと気づくと、眼下に氷川の町並みが広がっていた。あそこまであと少し、楽しんで行こう。
2021年1月