庄内、春の味覚 – 山の恵み編
庄内平野は日本有数の米どころだ。肥沃な土壌は最上川によってもたらされた。庄内平野の背後は豊かな山である。日本海の海の幸とともに、豊かな山の恵みも庄内の食の魅力だ。
春の山の恵みといえば、やはり山菜だろう。
山菜
鶴岡の割烹料理店でのこと、先付が三種の山菜だったので何気なく種類を尋ねたところ、返ってきた答えが「しどけ、あいこ、あまどころ」だった。ひとつも知らない。食べたこともない。異世界に来たことを実感する。
初めて食べたこともあって味を言葉で表現しづらいが、「しどけ」も「あいこ」も「あまどころ」も、山菜らしいほろ苦さのある、山菜らしい山菜だった。

わらびはよく食べられている山菜のひとつだ。わらびのおひたしは、庄内に限らず山形県内の居酒屋メニューでよく見かける。地元民の訪れる居酒屋にあるのだから、地元民がよく食べる山菜なのだろう。

ばんけ味噌
居酒屋の旬のおすすめにあった「ばんけ味噌」というものを、なにかわからずに注文したら、甘いふき味噌が出てきた。庄内では、ふきのとうのことを「ばんけ」と言うそうだ。ふきのとうのほろ苦さと甘い味噌の組み合わせが絶妙である。酒の肴にもいいが、これはぜひ白飯にのせて食べてみたい。

孟宗と月山筍
庄内ではタケノコのことを孟宗という。孟宗と厚揚げ、椎茸を煮て、味噌と酒粕で味を整えた孟宗汁は、春の庄内の代表的な料理だ。家庭でもよく作られるし、居酒屋のメニューにもある。マスのあんかけとともに春の祭りにもかかせない。

決して通年食べるものではなく、あくまでも春の料理なのは、水煮のタケノコなんて使わないからだろう。作るのは特に難しくもないので、私も採れたてのタケノコが手に入った時は、酒粕を買ってきて孟宗汁にする。

根曲り竹、あるいは姫竹とも呼ばれるチシマザサのタケノコもよく食べられている。庄内での呼び名は月山筍だ。孟宗に比べると高級品の印象がある。

他地域のように鯖缶や鮭缶とともに味噌汁にするのは見かけたことがない。シンプルに焼いて食べたり、天ぷらにして食べたりすることが多いようだ。

笹巻き
水に浸した餅米を笹の葉で三角に包み、水または灰汁で煮たのが笹巻きだ。水で煮ると白い笹巻きになり、灰汁を加えれば黄色の笹巻きになる。すげの紐を解いて笹の葉をめくると、笹の香りがふわっと立ち上り、中から鮮やかな黄色が現れる。幸せな瞬間だ。きな粉と黒蜜をかけて食べる。

笹巻きは端午の節句の行事食だったが、いまでは産地直売所などで通年売られている。とはいえ、見かける機会は多くはない。家庭で作られることは少なくなり、作り手も減っているという。





