身を削り人々に恵む – 武甲山
秩父のどこから見ても、そのスキッとした姿が人目を引く武甲山。しかし元々の武甲山は、こんな尖った山ではなく、もっとふっくらとしていました。
石灰を得るために削られて、いまの形になっていったのです。
良質な石灰岩でできた武甲山を削ってできたセメントは、秩父経済のみならず、高度経済成長期の日本の発展を支えました。
北側斜面は大きく削り取られ、岩肌がむき出しになっています。1336mだった山頂は41mも低くなってしまいました。
いまある武甲山御嶽神社は、なくなってしまった山頂近くから遷座されたものです。
後に測量で見つかった9m高い別の地点を現在の山頂とし、そこに1336-41+9の碑があります。
それは、山頂と呼ぶにはあまりにも違和感のある場所でした。
さらに上へと向かう途中でぶった切られて崖になってる狭いスペースです。
身を削って国の繁栄を支えた武甲山。登るまでは、それもまた山の運命と思っていましたが、この山頂に立つと、さすがに悲しい気持ちがこみ上げてきます。
武甲山の山頂は、そんな場所です。
2013年4月