金沢おでん
金沢はおでんの町だ。人口当たりのおでん提供店の数は全国一で、おでん消費量も一位であるという。
金沢おでんの出汁は、店によって昆布と鰹節だったり煮干しが加わったり鶏ガラベースだったり、塩のみで味付けたりほんのり甘い醤油を加えたりと様々だが、どの店でもおでん種の旨味が溶け込んだ淡麗でありながら深い味わいの出汁が主役である。
そんな出汁の旨さを最も堪能できるおでん種は車麩だろう。たっぷりの出汁を含んだ車麩を齧ると、旨い出汁がじゅわっと滲み出す。
ひろずとも呼ばれる金沢風のがんもどきや焼き豆腐も、おでん種に染みた出汁が旨い。
海の幸のおでん種も多い。有名なカニ面以外にも、出汁のよく出る梅貝や白子もおでん種になる。
えびしんじょうや赤巻きといった練り物もある。赤巻きとは北陸特有の赤と白の渦巻き状のかまぼこだ。
干瓢で束ねたふきや油揚げに詰めたぜんまいといった山の恵みもおでん種だ。
加賀野菜もおでんになる。
源助大根や春菊、れんこん団子などが代表的な加賀野菜のおでん種だ。
すじ煮込みやどて焼きは、一般的にイメージするのとは異なるものが出てくる。どちらも一品料理というよりも、おでんの出汁で煮込まれていて、おでん種のひとつに近い。
すじ煮込みは牛スジの、どて焼きは豚串のおでんで、どちらも白味噌がかけられていた。
その他、特徴的なおでん種としては、だし巻きや生麩、ふかしという揚げてないさつま揚げなどがある。
湯剥きした丸ごとのトマトといった変わり種もある。もう、だいたいなんでもおでん種だ。
金沢おでんは夏でもよく食べられている。冷たいおでんもあるらしい。
今回は時期が悪く、冬の主力のカニ面も源助大根も食べることができなかった。
夏にも冬にもおでんを食べに、また金沢に行かなければならないな。