山の神様の千本の桜

麓から山頂へ、何度か折れ曲がって続く登山道。その登山道に沿って植えられた桜の木。春になるといっせいに咲く桜の花が、青空の下の緑の山肌にピンク色の帯となっています。

そんな写真を見たとき、ここに行ってみたいなと思いました。

場所は山梨県中央市、「山の神 千本桜」という名前も素敵です。

駐車場に車を停めて登山口へ歩いて向かうと、正面に目指す山が見えてきました。

ん?なんか違うくない?

山肌にピンクの帯となっているはずの桜の木々でしたが、なんだかまばらです。

うーん、こんなもんかな…と、少々がっかりしつつ登り始めました。

よく見ると確かに登山道に沿って、ずっと桜の木が植わっています。しかし、満開をだいぶ過ぎてしまったようで、花は散り葉が出ているのがほとんどでした。ほんとは一週間前に訪れる予定でしたが、満開にはちょっと早いかなと思い延期したら、どうやら一番いい時期を外してしまったようです。

それでも、ところどころにまだ花を付けている桜の木を眺めつつ、登山道を登っていきます。

南アルプスが正面に見える見晴らしのいい場所で、地元の方々が木々に提灯を飾っていました。

聞けば、翌日の17日が、山の神様のお祭りだとのこと。登山道を登った先の山の上の祠で、お祭りがあるそうです。

桜、もう終わっちゃったのに。しかも明日は月曜日だし。

それでも、4月17日というお祭りの日付は変更できないとのこと。もうずっと、その日がお祭りだったのでしょう。昔はちょうど桜の花咲くころだったのかもしれませんが、最近では花も終わっていることが多いのではないでしょうか。子どものころに比べても、いまは桜の開花が早くなっている気がします。

展望所を過ぎてしばらく登ると山の上の祠に着きました。

立派な祠で綺麗に維持されていて、ここが地域の方々にとって、いまでも大切な場所だということがよくわかります。

祠からさらに先へ進んで、たいら山の山頂へ向かいます。

祠から先へは歩く人もなく、木々が葉を落とした明るく静かな森を抜けていきます。

なんだかやたらと案内表示が多く、「たいら山」という文字がゲシュタルト崩壊を起こしたころ、山頂に着きました。

山の名の通り、山頂は広くて平らでした。木々に囲まれていて、展望はありません。そして桜もありませんでした。葉を落とした広葉樹が茂っているだけです。

桜の花の満開の山頂を期待して来ましたが、想像とはまったく違う山頂でした。それでも、花はないですが、ここで花見とします。

静かで広くて明るくて、空気は清々しく、これはこれでいいものでした。