九州は今日も雨だった – 由布岳
空が暗い。
すでに日の出の時刻は過ぎているが、空は黒に近い濃い灰色だ。雨もポツポツ落ちている。由布岳のほうを見上げたが、山頂は厚い雲に覆われていた。
あ〜あ。九州二日目も天気はさえないようだ。
登山口に車を止めたが、登る気になれずぐずぐず待機していた。数時間が経つとようやく空も薄っすら明るくなり、山にかかっていたガスもなんとか取れていた。
行くか。
雨はやんだとはいえ、空は灰色のままだ。登る足取りも重い。山頂までひたすら登りが続く。前日の疲れも取れないまま、地面を見つめて淡々と登る。
しだいに空が明るくなってきた、と思ったら雲の上に出た。厚い雲を抜け出た上は、青空の下に広がる雲の海だった。
九重連山が浮かんでいる。右手は阿蘇だろう。すっきり青空に気分も少々晴れる。
天気がよくなったからといって急に体力が快復するわけでもなく、ゆっくりたらたら登り坂を登っていく。
別府や湯布院からも近いため、登山者というよりは観光客といったいでたちの方々が多い。日ごろ山に登ってなくともサラッと登れてしまう程度の山なのである。子供を含む家族連れも多い。そんな方々にどんどん追い越されていく。
息を切らしてマタエまで登った。ここでようやく火口を見下ろすことができる。ここから左へ行けば西峰、右へ行けば東峰だ。標高が高いのは西峰だが、こちらはクサリ場もあり、家族連れは東峰へと登っていく。東峰へは普通に登りやすい道で、ただ登るだけでいい。
まずは西峰を目指した。
こちらに来るのは、さすがに登山者っぽい格好の人がほとんどだが、危なっかしい人もけっこういた。クサリ場といっても足元はしっかりしていて、クサリが無くとも登れる程度ではある。なのに、岩場の途中で動けなくなってしまったり、しっかりマークが付いているにもかかわらずルートではないところへ入り込んで、進退窮まっている人もいた。見てるこちらが心配になる。
まあ、そんな中をスイスイっと登頂。ここが由布岳最高地点だ。
なかなか気持ちいい山頂だ。眺めも良く、まあまあ静かである。
天気よくなったのでお鉢巡りをすることにした。ぐるっと回って東峰を目指す。
西峰を過ぎると、それまでの誰でも歩けそうな道からがらっと変わって、いきなりの破線ルートになる。
急坂はザレており、岩場にはクサリなどの補助は一切ない。道標は分岐にひとつあっただけで、ペンキマークも一切ない。踏み跡も濃いとは言えず、岩場を超えて進むのか、巻くのか、自分で判断しなければならない。
いったん標高を大きく落としてから再び登り、東峰に到着した。こちらは賑やかである。家族連れやカップルで華やかな山頂に、汗まみれのソロのおじさんは似つかわしくなかった。
ほんとは鶴見岳まで縦走する気でいたが、出発か遅かったのと体力不足で、ここまでで下山することにした。
下りも足が重く、どんどん抜かされていく。もう次から次へと抜かされていく。軽く100人以上に抜かされたのではないだろうか。抜かしたのは、幼児連れのファミリー三組だけだった。
駐車場まで下山すると、山頂は再び灰色の雲の下。お鉢巡りのあいだだけでも晴れてくれたのは幸いであった。
九州三日目も、朝から雨が降っていた。
午前中に軽く英彦山に登り、午後の早い時間から東京へ向けて運転し始める予定であった。
しかし雨。濡れたあとそのまま一日以上運転しつづけると思うと気が重い。まあ、英彦山ならいつでも登れるだろう。二日間の登山でじゅうぶん満足したし、と自分に言い聞かせ、この日の登山は中止にした。
数年前、英彦山に登ろうとしてカメラがないことに気づき、前夜に夕飯をとった熊本まで車を飛ばして回収に向かったことがある。そのとき以来の英彦山チャレンジだったが、今回も中止。そして、そのときのカメラが今回は水没し、いまは無用の鉄塊となって助手席にある。無常だ。
二度目の英彦山駐車場にての撤退となった。
終わりよければ…というが、これじゃあ逆だな。まあしゃあない。時間に少々余裕もできたし、なにか食べてから帰ろう。といってもこの時間じゃ、うどん屋くらいしか開いてないか。
こうして、2017年ゴールデンウィークの九州遠征は、さえない感じで終了となったのであった。