真夏の鍋焼きうどん – 鍋割山

夏は丹沢!

春と秋と冬はいつも混雑してるけど、夏の丹沢はけっこう空いてます。

暑い季節に低い丹沢をしっかり登って、たっぷり汗をかいてこよう。ついでに有名な鍋焼うどんも食べてこよう。

そんな計画で出発です。

歩き始めるとたちまち汗が吹き出してきました。

雨上がりで湿度が異常に高く、もちろん気温も高く、じっとしてても汗が滲み出てきます。そんな中を登るのですから、たいへんなことになります。

1時間ほど歩いただけで、首にかけたタオルはそれ以上の水分吸収ができないほど濡れてしまいました。絞ると、うす茶色の水がダラダラと流れ落ちます。いや、これ水じゃなくて、汗か…。

そうそう、この季節で雨上がりで湿度が高いといえば、奴らの出番です。ここは丹沢、すっかり忘れてました。気づけば、何匹も足首に吸い付いています。

毎年一回はうっかり来てしまう山ビル山。昨年も高ドッキョウでやられました。それにこりて、その後はザックに塩を入れっぱなしにしてあります。一年経って、いよいよ出番の時がきた…はずなのですが、前夜に自宅で料理するとき塩が切れていて、ザックから出してしまったのでした。一年間無駄にザックに入れていた最終兵器は、いまは無駄に台所に置き去りにされています。こうなればしかたありません。いつも通りに引き剥がし引き千切りながら進みます。

西丹沢はそれほど山ビル濃度が濃くはありませんでした。高ドッキョウや石砂山のように、四方八方から数十匹の山ビルが蠢き向かってくるなんてことはなく、気づけばいつのまにか足首に吸い付いてる程度です。このくらいなら、山ビルがいるかいないかといえば、いない方に近いくらい。よゆうです。

寄からの細い山道は、大倉からの登山道と合流すると、整備された広い道になりました。ここからは山ビルにもほぼ出会わなさそう。しかし、暑いには変わりありません。ファイントラックの速乾シャツはすでにぐしょ濡れで、もうずっと濡れたままです。

平熱36度8分なのですが、いまは運動して体が火照っており、おそらく37度は超えているでしょう。じっとしてても汗が吹き出してきます。よく、登山では汗をかかないようにゆっくり歩けと言いますが、そんなことできるわけありません。ゆっくり歩くどころか、じっとしてても汗をかくというのに。

朝からなにも食べてないので、空腹で力が入りません。水は多量に飲んでます。冷たい水が美味し過ぎます。水を飲むと、飲んだそばから汗が吹き出してきます。

山頂直前で道をゆずってくれた小学生に「あと少しだから!」とお声がけいただきました。よっぽどたいへんそうに見えたのでしょう。

ふらつきなから鍋割山に到着。予定よりだいぶ時間がかかってしまいました。山荘に入り、さっそく有名な鍋焼きうどんを注文します。山荘の人に「すごい汗ね…」と驚かれましたが、注文します。すごい汗はいつものことです。山ではいつも、風呂上りの人みたいな髪型になっています。

鍋焼きうどんをひと口。う、うまい…。

水分と塩分の欠乏した体に、うどんの汁が染み渡ります。そして、さらに汗が吹き出します。

普段から食事をするだけで汗をかきます。夏場にラーメンなど食べると、顎から滴る汗をどんぶりに落としつつ食べることになります。ましてや、登山の最中に鍋焼きうどんなど食べたらたいへんなことになるところですが、すでにぐしょ濡れなので、それほど変わりませんでした。

美味しくて一気に汁まで飲み干してしまいました。空腹は最高の調味料といいます。山で食べるとなんでも旨いともいいます。その両方の合わせ技ですから、美味しくないはずがありません。もしこれを下界で食べたらどうか…という問題にはノーコメントです。そもそも夏に鍋焼きうどんは食べないでしょう。

お腹も満たされて先へ進みます。急に食べたせいなのか、なんだかお腹が張ってきました。食べてすぐに歩き出したのもよくなかったかもしれません。相変わらず汗はダラダラと流れます。しょっぱい汁を飲んだせいで、よけいに喉が乾き、水を飲むとさらに汗が吹き出します。

よたよた歩いて塔ノ岳に到着。腰を下ろして休みます。ぱらぱらと登山者はいますが、やはりこの季節は静かです。

さて、この先、計画では丹沢山まで行き、カレーを食べるつもりでした。しかし鍋焼きうどんでまだお腹が減ってません。それにもう、この暑さの中で登りたくはありません。

登り返してカレーより、下ってカキ氷にしよう。そうだ、それがいい。

そうと決めたらサクッと下ります。下りでも汗が吹き出してきます。そうしてあっというまに花立まで降りました。早々にカキ氷を注文します。

手渡されたちっちゃなカキ氷は、暑さのためにどんどん溶けていきます。山荘の外へ移動するだけで、二割くらい減ってしまいました。あせって口に運びます。食べてるうちにも、カキ氷は容赦無く溶けていきます。そして、あっというまに無くなってしまいました。

す、すくない…。あと三つは食べたい…。

おかわりしたい気持ちをぐっとこらえ、下山します。なにせ400円ですから。

途中、駒止茶屋で休憩し、150円の牛乳プリンをいただいてから、大倉へと下山しました。

けっきょく最後まで、流れ出る汗は止まることなく、ファイントラックの速乾シャツは乾くことありませんでした。

バス停へ向かう道すがら、親子連れとすれ違いました。

子「あの人、すごい汗…」
父「ヤバイね…」

聞こえてますよ…。

さすがにこのままではあんまりなので、Tシャツだけお着替えします。

そして最後は生ビールで終了。このために汗をかきつづけてきたといわんばかりの美味しさでした。