霧の霧ヶ峰
真っ白だ。数メートル先しか見えない。夜が明けて朝になったが、太陽の暖かさは感じられない。
夜半過ぎに駐車場へ着いたときは、激しい風と雨で車が揺れるほどだった。朝になり、だいぶマシになったが、回復したとは言いがたい天気だ。
なだらかな登りを登っていくと、車山の山頂に着いた。気象レーダーのドームが、霧の中にぼおっと浮かんでいる。
風が強い。ドームの影に隠れてやり過ごす。
車山から先へ進む。
南の耳、北の耳と超えて大笹峰へ。大笹峰でUターンしてゼブラ山に登る。
このあたりはほとんど平坦で、山を登ってるという感じではない。霧に包まれた霧の高原だ。
ゼブラ山から八島湿原へと下った。
八島湿原に来るのは18年ぶりだ。
18年前のあの日、その後のいろいろも含めてなにかとたいへんだった。いまでも昨日のことのように思い出す。そしてそれからの18年間、ほんとにいろんなことがあった。
18年前の自分がいまの自分を予想しても、なにひとつとして当たらない。つまりは、未来を過度に案じても意味のないことなのだ。次の一歩を踏み出した先は、踏み出してみないとわからない。
八島湿原へは車で来れる。駐車場もあるので、山歩き風でない人も多い。あの日のぼくらもそうだった。
湿原をぐるっと半周回り込み、登り口から鷲ヶ峰へ登った。
あいかわらず天気はよくない。雨には降られていないが、いまにも降り出しそうな空模様が続いている。
晴れていれば、北アルプスや八ヶ岳がよく見えるのだろう。今日は霧の中の真っ白な山頂だ。
天気は良くなかったが、それほどがっかりもしなかった。どうやら山の空気を吸っているだけでも、じゅうぶん満足できるようだ。
用意してきた食事を鷲ヶ峰の山頂で取った。
そろそろ下山しよう。八島湿原まで下ったら、車山の肩まで登り返しだ。
下り始めると、空が明るくなってきた。
朝からずっと空を覆っていた灰色の雲が薄くなり、ところどころ切れてきた。
雲の切れ間から、諏訪の街が見えた。