きらきらと輝いていた二日間 – 剣山 / 三嶺

空は眩しく光り、山は白く輝いている。季節外れの昨夜の雪で薄化粧した稜線は、まるで粉糖をふりかけた洋菓子のようだ。

天気予報を精査して縦走に最適な日を選んだだけのことはある。降雪だけが心配だったが、この程度なら歩くのに問題はない。日が昇れば雪も溶けてしまうだろう。この美しい風景は、早朝だけの特別なものなのだ。

天気はいいが、風が強い。強すぎる。爆風に飛ばされそうだ。風は冷たく、体感温度はかなり低い。じっとしていられないので、早々に山頂を後にした。

次郎笈から臨む剣山も美しい。いつまでも眺めていたかったが、相変わらずの爆風だ。あまりの寒さにスマホの電源も落ちてしまったので、とりあえず風の当たらないところを探して先へ進む。

標高が下がると雪は消え、笹原が現れた。いつしか風も治まり、気温も上がってきた。さわさわと風にそよぐ笹の稜線を行く。振り返れば雪を戴く剣に次郎笈。幸せの稜線だ。

遠目にはなだらかに見えた稜線だが、見た目よりもアップダウンがあった。時には樹林帯へ下り、再び笹原まで登ってくることになる。いくつものピークがあり、それをひとつひとつ超えていく。ひさしぶりのテント泊装備がずしりと重い。

白髪避難小屋に到着したのはまだ正午をわずかに回った時間だったが、すっかり疲れていた。テントを設営し、昼ごはんを食べた。

白髪避難小屋の周辺は平坦な稜線だが、テントサイトとして整備されているわけではないので、張りやすい場所は少ない。皆が思い思いの場所に張るからテントが点在している。山の解放区といった良い雰囲気の場所だ。

ひと休みしてから白髪山へ向かった。

縦走路から外れて南へ延びる尾根を行く。

ところどころ踏跡も不明瞭な山道を1時間ほど登り、白髪山に到着した。笹の広がる静かな山頂だ。

三嶺から西へ伸びる稜線が麗しい。時間の都合で今回は三嶺から下山するが、いつか必ずあの稜線を歩いていこう。

二日目の朝、今日も快晴だ。朝の光に色付く山並みに囲まれて、ゆったりとした尾根を進む。

正面には三嶺。威風堂々とした山容だ。

一歩進むと一歩近づく。三嶺を正面に見据えて、ゆっくりと歩く。

青空にひと筋の軌跡を残して、飛行機が音も無く過ぎ去っていった。

ちょっとした岩場を超え、ひと登りしたら山頂だ。今回の山旅の最終目的地だ。

地元の人も今日は最高だと言う空模様だ。遠くの山まで見渡せる。太平洋も見えた。

三嶺から西へ伸びる稜線を見下ろし、この道を歩く自分の姿を夢想する。

次回はここを登って来よう。その時は三嶺小屋にテントを張ろう。

名残惜しく立ち去り難いが、そろそろ下らないと見ノ越の駐車場へもどるバスに間に合わなくなる。まあ、乗れなければそれはそれ。歩けばいい。

急ぐ必要もない。ゆっくり行こう。

2021年5月