お手軽に登る関西の山〜後編 – 六甲山

初日の出を六甲山から眺めよう。そう思いついて、夜明け前の街を出発した。

しかし、誰しも考えることは同じのようだ。スカイラインの見晴らし良い場所には、路上駐車の列が延々と連なっていた。車二台がやっとすれ違える程度の道の片側に、何十台もの車が停められている。大人しく駐車の列に並ぶか、一か八かで抜かすしかない。

さすがに路駐で登山は気が咎めるので、長大な縦列駐車を追い越していくことにした。もしも前から車が来たらにっちもさっちも行かなくなるところだったが、運良く駐車列の前に出ることができた。

そうして山頂の駐車場まで来てみると、なんとコロナ対策とやらで終夜営業を取りやめていたのであった。膨大な数の路上駐車はこのせいだったのか。なんというか、なんの対策にもなってないばかりでなく、危険が爆増ししているだけのようである。

さて、どうしよう。車を停められそうなところを探してぐるぐると辺りを走ってみた。

有料の駐車場はどこも9時30分営業開始である。そうこうしてるうちに日はすっかり上り、初日の出の見物客も徐々に帰り始めた。ようやくミニパトもやって来たので、路上駐車も解消されるだろう。

9時半までどうやって時間を潰そうか考えていたら、道路わきの無料駐車スペースを見つけたので、そこへ停めることにした。山頂までは標高差と距離が多少あるが、普通の登山に比べればなんてことはない。

民家の間を登り、ゴルフ場の脇を抜け、いまだ営業前のガーデンテラスの駐車場を横切り、ハイキングコースを進んでいく。

夜明け前後の喧騒はどこへやら、いまはすっかり静かになってしまった。たまに登山者に出会うくらいである。

朝方は残っていた雲も、日が昇るにつれて薄くなってきた。眼下には神戸の街と海が広がっている。

気分良くハイキングコースを歩き、小さなピークに登って下ると舗装路に出くわす。しかたなく舗装路沿いに歩いたり横断したりして、またハイキングコースに入る。そして再び山道を歩き、少し進むとまた舗装路に出てしまう。興ざめだけどしかたない。車道が稜線を走っているのだから。これ、ずっと車道を歩いた方が速くないか?と思いつつ、歩けるところはハイキングコースでいく。

そうして何度目かの山道歩きでようやく山頂に到着した。

六甲山には以前にも来たことがあるが、その時は駐車場までで、山頂に来るのは初めてである。

空はすっかり晴れ渡り、気分の良い新年一発目の山頂だ。

しばらく山頂を満喫してから下山する。

行きと同じように山道を歩いたり舗装路を歩いたりして駐車場までもどる。

車を停めたのがケーブルカー駅のすぐ近くだったので、帰りに駅に寄ってみた。そして気付いた。

あぁ、ここだよ。ここだ。間違いない。以前に来て、山頂だと思ってたのはここだ。この天覧台というところだ。早朝に通ったガーデンテラスの駐車場はなんかピンとこなかったんだけど、そりゃそうだ。そもそも記憶では駐車場は有料じゃなかったし。

それにしても、以前に登ったのが最高地点でないのはわかってたけど、まさか稜線ですらなく、中腹のケーブルカー駅までだったとは思いもしなかった。

2021年1月