終着駅の飲屋街 – 氷川

東京の奥地、青梅線の終着駅奥多摩。

都内とは思えない山間の小さな駅にもかかわらず、駅前には飲み屋街があります。それも、二つも。お稲荷こみちと柳小路という二つの細い路地にそれぞれ数軒づつ、合わせて十数軒ほどのお店が営業しています。どこも、五、六人も入れば満席になってしまうようなカウンターのみの小さなお店ばかりです(奥に隠し座敷のあるお店もありますが)

かつて電車で登山してた時代にはちょくちょく立ち寄ったものでしたが、最近はとんとご無沙汰でした。うちから奥多摩は車ならすぐですが、電車を使うと始発に乗っても都心からとあまり変わらない到着時間になってしまうのです。
で、調べてみたら、もう三年以上も電車で奥多摩には行ってませんでした。これはいけませんね。途中駅の勤め先まで定期券もありますし、たまには電車で出かけてご無沙汰してる飲み屋にも顔を出しておこう。そう思ってやってきました。 雨が降ってるというのに。

いちおう山にも登りました。が、それはもうどうでもいいです。

本仁田山から川苔山まで行こうとしましたが、天気はいまいちだし風邪気味で熱っぽいしで、大ダワまで歩いてやめにしました。なんかもう飲みに行くことばっかり考えてて、さらにひと山登る気になれなかったというのが正直なところです。

下山して温泉で温まって、さっそく最奥の飲み屋街のはしごを開始しました。

しかし、こんな山間の小さな集落に、こんなにも飲み屋が乱立していて、それぞれやっていけるのでしょうか。まあ、やっていけてるんでしょうね。

人を雇ってないから、店を借りてるわけではないから、なんとかやっていけてるとみなさま口を揃えておっしゃいます。基本的に長く営業されてるご高齢の方々ばかりで、あと数年続けられればそれでいいけど、若くしてやってる人たちはこれからたいへんだよともおっしゃいます。あの新しくできたビールのお店のことでしょうかね?

地元の人が飲みに来てくれないと、観光客だけではやっていけないけど、地元の人で飲みに来るのも高齢者ばかりになってしまったそうです。ここ奥多摩でも、若い人たちは飲みに出てくるようなことはほとんどなく、飲まないか飲んでも家で飲むばかりだと聞きます。高齢者の方々も、バスの便が少なくなってしまい、飲んだ後の帰る手段がないため、昔ほどは来てくれないそうです。

この二つの路地にあるのは、どこもディープなお店ばかりです。なんとなくこれが奥多摩では普通な感覚になっていますが、普通では考えられないようなお店が多いです。

おしゃべりのおかみさんがずっと話し続けていて、その相手をしてると注文するどころか、酒を口に運ぶすきもないお店とか、ご高齢のおばあちゃんが震える手つきで焼き鳥を焼いていて、その様子をハラハラしながら眺めつつ飲むお店とか…。

お気に入りのお店は何軒かありますが、店名を記すのは控えておきます。

まあ、奥多摩はお店もたくさんありますし、わたくしもまだ入ったことのないお店が何軒もありますから、みなさまご自分のお気に入りを見つけてくださいね。

この日は朝から天気が悪かったせいで、登山者はほとんど見かけませんでした。三連休だと混むだろうってことで、地元のひとは出てこないらしく、駅前は閑散としていました。

どのお店もお客さん入っておらず、おかげで女将さんのお相手をひとりで引き受けることになり、飲んでるのか話しを聞かされてるのかよくわからない時間を過ごす羽目になりました。まあこれも、奥多摩の飲み屋の魅力ではありますが…。

風邪気味と寝不足とディープな雰囲気に当てられて、ぐるぐるに酔って奥多摩を後にしました。