秀麗富嶽十二景完結編 – お伊勢山

大月市の秀麗富嶽十二景は、全部で20の山頂から成っている。

大月の山々から望む富士山が十二単を纏っているように見える…という解説からもわかるように、十二という数字を使うために19の山頂を無理やり十二景にまとめていて、さらに十二景の制定後に暫定登録され、いつまで経っても暫定のままだけど山頂にはちゃっかり秀麗富嶽十二景の標識のある一山を加えると20山となる。

これら20の山のうち19の山頂には登ったことがある。最後のひとつを何年も放置してたのは、その山の場所がよくわからなかったからだ。

お伊勢山というその山は、秀麗富嶽十二景の8番山頂として岩殿山といっしょにされているので、岩殿山の近くだということはわかる。大月市発行の秀麗富嶽十二景パンフレットの絵地図でも、岩殿山の左側に山の絵が書いてあった。しかし、登山地図のそのあたりを眺めまわしても、それらしき山が見当たらない。

お伊勢山の場所が判明したのは、たまたま別エリアの登山地図を見たからだった。大月周辺は隣り合った二つの登山地図のエリアが重なっているのだが、その片方にはお伊勢山が記載され、もう一方には記載されていなかったのだ。

山の場所がわかってからも、実際に訪れるまでに数年かかってしまった。お伊勢山は桜の名所のようで、それに合わせて行こうとするとチャンスは年に一回しかない。休日と開花と天気がぴったり合わなければ、さらに一年繰り越しとなってしまう。

さて、前置きが長くなったが、今年は条件がそろったようだ。数年越しの秀麗富嶽十二景完結編だ。

大月駅からバスに乗り、上真木で下車した。バス停の目の前に神社の入り口がある。お伊勢山は、この天照皇大神宮の境内にあるらしい。

石畳の参道を登っていく。桜はそろそろ終わりかけだろうと予想していたが、まだまだじゅうぶん咲いている。天気も上々だ。

地図を見てわかるように、お伊勢山は山とは言いがたいほどの低山だ。いや、低山とすら言えないかもしれない。地図でも、山ではなく神社として扱われている。

5分も登ると神社に着いた。ここからの眺めはなかなかいい。今日は桜祭りなのだろう。地元の人たちが準備を始めている。

登山地図ではここらへんが山頂のように記してあるが、現地の案内を見ると、どうやら神社の裏手に真の(別の?)山頂があるようだ。

緩やかな山道を歩いていくと、5分ほどで目当ての場所に着いた。ここにはお伊勢山の山頂標識に秀麗富嶽十二景の碑もあったので、ここが山頂でいいだろう。ピーク感はまったく無く、墓地の前(しかも墓地より一段低い)という微妙なロケーションだが、富士の眺めは悪くない。

さて、これで秀麗富嶽十二景は完結したが、まだ10分少々しか歩いていない。電車とバスを乗り継いで来てこれだけなのはあんまりなので、先へ進んで稚児落とし経由で岩殿山まで歩いた。

岩殿山の山頂は桜が見頃を迎えていた。お昼を過ぎて、人もまばらだ。

秀麗富嶽十二景の20の山のうち、一度しか登ってない山もあれば何回も登った山もあるが、山頂で富士山が見えた山を数えてみたら13山だった。あとの7山からも富士山を望み、全勝を目指したい。

大月駅まで歩いてもどり、駅前の食堂でささやかに祝杯をあげた。