FUCKIN’ 恋人の聖地 – 白鳥山
どこまで運転すれば辿り着くのだろうと少々不安になりながら、山肌をうねるように付けられた舗装路をずっと登っていく。ゴルフ場を通り過ぎても、まだ先へと道は続いている。
麓からずいぶん走って、ようやく登りきったところが白鳥山森林公園の駐車場だった。ここはもう山頂のほんとにすぐ下である。
大無間山から下山し、駐車場まで歩いてもどると、周囲はすっかり暗くなっていた。町までの数十キロを運転し、温泉で汗を流してから静岡県内で最近流行りのハンバーグ店での夕飯をすませると、まもなく日付が変わりそうな時刻であった。
あまり睡眠をとらずに一日中歩いたあとである。このまま帰っても途中で眠くなるのは確実だ。そこで、朝まで仮眠して、朝になってそのまま帰るのもなので、山頂直下に駐車場がある白鳥山に寄ってみることにしたのだ。
しかし、山頂直下といっても、ほんとにこんなに山頂のすぐ下に駐車場があるとは思わなかった。なんかすぐそこが山頂のようである。
駐車場の手前の登山口からは、完全に整備された道が続いていた。コンクリートで舗装されたこの道は、登山道とは呼びがたい。そう、ここは公園なのだ。
そして10分も歩くと白鳥山の山頂であった。駐車場からの標高差、実に50メートル…。
福岡県の背振山に匹敵する最短登山である。が、あちらは山頂に自衛隊の施設があるので、道がつけられてるのはわからないでもない。しかし白鳥山の道は純粋に山に行くためのものである。
なんというか、なんかすごいな。
あっさり着いてしまったが、山頂からは正面に富士山が見えていて、なかなか眺めのいいところだ。関東の富士見百景のひとつでもあるらしい。
そして、山頂の富士山を見渡す一等地には、山頂ではあまり見かけることのない形の物体もあった。
ハート???
なんだこのハート型の穴は?と思い近づいていくと、なんとここは、恋人の聖地に認定されているのではないか…。
恋人の聖地…数々の観光地で遭遇してしまい、そのつどムッとした気分にさせてくれたものだが、こんな山の上でも出会うとは…。くそっ。
恋人の聖地とは、NPO法人地域活性化支援センターが選定したデートスポットである。恋人の聖地プロジェクトなんておせっかいなものもある。
まったく余計なことしやがって。だいたいこんなことで地域が活性化するわけがないだろう。まったくもう。
オブジェは気にくわないが、眺めは悪くない。広々として静かな山頂である。こんな早朝から登ってくる恋人たちもいない。恋人たちはたいてい夜更かしだからな。
手ぶらで登ってきたので、駐車場までもどり、食材と調理器具を取ってきて朝ごはんを作ることにした。片道10分というのはこういう時に便利だ。
インスタントラーメンにカレーを食べてコーヒーを飲む。
早朝から、なかなか優雅な気分だ。
あの目障りなオブジェさえなければ…。