昭和の香りの映画館、百名山のこと、空き地の立派な駅 – 石尊山

インド映画はおもしろい。インド映画について語り始めると長くなるので割愛するが。そのインド映画を観るために高崎まで遠征した。高崎電気館でインド映画の特集上映があったからだ。

合計3日間の滞在中、午前と午後に一本づつ鑑賞する予定であったが、3日目午前のプログラムは過去に観たことのある作品だった。傑作だったしもう一度観てもいいのだが、せっかくここまで来たのだからと山にも登っておくことにした。

ぐんま百名山の中から高崎近郊の山を調べる。

○○百名山というのは様々あるが、完登を目的に山登りする百名山ハンターもいれば、他人の選んだ山に拘ることに批判的な人もいる。どっちもどっちだなと思うものの、他人の行為にケチを付けている分、後者の方がタチが悪い。最近はSNSの隆盛で、無益な争いやマウント取りが可視化されてしまい辛いものがある。人の心の中が透けて見えるっていうのも、あまりいいことではないようだ。

○○百名山というのは、少なくとも誰かが良いと思って選び、ある程度のコンセンサスが取れている山なのだから、それなら登ってみたいなというのが私のスタンスだ。特に今回のようなノープラン登山の目的地選びには便利である。

高崎市内にも観音山というぐんま百名山の山があったが、どうやらこれは公園のようなのでパスして、隣りの安中市にある石尊山に登ることにした。標高571m、これなら午前中にサクッと登ってこれるだろう。

まずは最寄りの駅である安中榛名駅へ向かって車を走らせた。

安中榛名駅は、高崎駅と軽井沢駅の間にある北陸新幹線の専用駅だが、周りに「なにもない」という表現がぴったりであった。新し目の民家がポツリポツリと建っているが、店らしきものは見当たらない。立派な建築物を空き地にどかんと建設したような駅である。気になったので利用者数を調べてみたら、2019年の1日あたりの乗客数は284人であった。284人!しかし、駅の立地を目の当たりにすると、そんなに利用者いるのかなというのが正直な感想である。

どこかに車を停められるだろうかと心配して来たが杞憂であった。駅の南北には立派な無料駐車場が併設されている。公園やグランドもあって、こちらにも駐車場がある。なにせ土地は余りまくっている。

北側のグランドに車を停めて、コンクリートで固められた細い山道を登っていく。しばらく登ると登山口に出た。天気は上々、ギザギザの妙義山が異彩を放つ。

あっという間に山頂に着いた。駐車場からここまで30分。

これではいくらなんでも短かすぎるので、少し縦走することにした。道はいくつかあるようだから、どこかには下山できるだろう。

30分ほど山道を歩き、里へ降りた。ひと気の無い集落を抜けて、舗装路を歩いて駅までもどった。

静まり返ったグランドの駐車場には、自分の車だけがポツンと停まっていた。

2021年2月