あの山の向こうへ – 常念岳

マジこれ登るのかよと思わせる常念岳へ続く道。

穏やかな蝶ヶ岳とは対照的なゴツゴツした岩山だ。

蝶ヶ岳からここまでも楽な歩きではなかった。

穏やかだったのは山頂周辺だけで、その後は登り下りのくり返し、森林限界より下の鞍部まで下って、再び森林限界を超えたピークを目指す。

そうして、蝶槍や他のいくつかの名前の付いてないピークを越えてここまできた。

そしてたどり着いた常念岳への最後の登り。このラスボス感。

岩がちな登山道を休み休み登る。

天気はあいかわらず絶好調。素晴らしい風景に後押しされて、疲れた足をまた一歩前へと運ぶ。

やっとたどり着いた常念山頂でも、どこから見ても容易に同定できるとんがった頂が目の前に。

さらには、常念岳に隠れて見ることができなかった北アルプスのさらに北も。

ひとつの大きな頂きに立てば、その先のまだ見ぬ景色を見ることができる。そしてまた、さらに先の頂きへ、さらに高い頂へと進んでいくことになる。まだ見ぬ風景を求めて。

山頂では達成感や安堵感も多少はあるものの、心からそれを味わうことはできない。山登りはこれでおしまいではないことはイヤというほど知っているから。

さて、いつでもどんな山でも困難な下山の始まり。

前常念経由の下山道は急傾斜の岩場から始まる。ようやく岩が少なくなると、ザラザラ滑る急傾斜のザレ場が続く。油断しなくてもザザザッと滑り落ちてしまう。

失敗すれば死か、よくても大ケガだ。

疲れた体と重い足を慎重に慎重に前へと進める。

2013年10月