薄暗い樹林帯と秋色の尾瀬 – 皿伏山 / 尾瀬ヶ原
さわやかな秋晴れの日、頭の上には雲ひとつない青空が広がっているはずだが、いまはその空は見えない。深くて濃い樹林帯は薄暗く、足元はジメジメとぬかるんでいる。
富士見峠では数人のハイカーに出会った。尾瀬ヶ原や鳩待峠へ向かうルートは賑わっているようだ。だが尾瀬沼方面へは誰も歩いてこない。そりゃそうだろう、こんな天気のいい日には、もっと展望の良いところを歩いたほうがいい。
まあ、いいや。来てみたかったんだから来たんだしな。
皿伏山を超えて尾瀬沼へと下っていく。
尾瀬沼に出ると雰囲気が一変した。カラフルなハイカーがぞろぞろ歩いている。なんとなく場違い感を感じて黙々と進む。
午後遅くに見晴らしに到着すると、広々としたテントサイトにはすでにぎっしりテントが張られていた。ここがこんなにいっぱいになるなんて、秋晴れの尾瀬恐るべし。
微妙な空きスペースにテントを設営し、尾瀬ヶ原を散策する。秋色の尾瀬ヶ原には寂しげな美しさがある。
いいなあ、何度も来てるから見飽きた風景だけど、でもやっぱりいいな。
至仏山に燧ヶ岳、春に登った景鶴山。先ほど通過した皿伏山も見える。
風景が柔らかな光に染められて輝いている。
この場を離れ難く、日が沈み、暗くなるまで佇んでいた。
翌日も晴天だった。
早朝の尾瀬には透明な美しさがある。夕暮れとはまた違うが、どちらも良い。
尾瀬ヶ原を歩いて竜宮十字路へ。
あとはここから富士見峠を越えて富士見下までもどるだけだ。
時間の許す限り満喫していこう。
2022年10月