カウントダウン多摩百山 – イソツネ山

緊急事態宣言とやらで不要不急の外出自粛だの県外移動の自粛だのと、なにかと大っぴらに出歩きにくい毎日が続いている。そんなの関係ないぜと遊びまわるのもありだが、基本的には従っておくことにしている。登山も人生もある種のゲームだから、ゲームのルールは無闇に破らないほうが満足度は増す。この状況でどうやって楽しむか、それを見つけ出すのも楽しみのひとつだ。

東京都から出られないのなら、東京の山に登るしかない。しかし、ただ漠然と同じようなルートで同じような山をくり返すのは退屈だ。そこで、多摩百山を目指すことにしてみた。多摩百山というのは、日本山岳会多摩支部が選定した100の山である。多摩地区から100もの山を選び出したら、けっこう微妙な山も入ってるのではと思うかもしれないが、その通りである。だが、それがいい。こういう機会でなければ登らないような山に出会うことができる。

昨年4月の緊急事態宣言発令時に、100山のうちの登ったことがある山を数えてみたら83であった。残っているのはマイナー山ばかりであり、バリエーション尾根上のピークも多い。この一年でこつこつとマイナールートを歩いて、さらに12のピークを踏んだので合計95。残りは5つ。今回はそのうちのイソツネ山を目指す。イソツネ山なんて聞いたこともなかった。こんな機会でもなければ登ることのない山のひとつである。

奥多摩駅から奥多摩むかし道を歩き、途中で逸れて山道に入った。登り口がわかりにくいのがマイナー山の特徴だ。ここで間違うとめんどうなので慎重に入山する。

奥多摩のバリエーション尾根は意外なほど踏跡がしっかりしてることが多い。この棒ノ木尾根もそうであった。

杉林を抜けて、明るい尾根を快調に登っていく。

イソツネ山への分岐点に近づいてくると踏跡が怪しくなってきた。イソツネ山へ行くには、棒ノ木尾根から左へ逸れる支尾根に入らなくてはならない。踏跡が見当たらないので、方向と距離を見定めて、支尾根に向かって斜面を進んだ。

支尾根に乗り尾根筋を辿っていくと、すぐにイソツネ山に到着した。いや、ここがイソツネ山だよな? ここでいいのだよな?

山頂というよりは、なだらかな尾根上の平坦地といった様子である。ここから先は一気に奥多摩湖まで降りていくことになるので、たぶんここで合ってるだろう。

広い平坦地をうろうろしていると、山頂標識を発見した。

それにしても山頂感のない山頂だ。分岐から平坦な支尾根を歩いてここまできたので、よけいにここが山頂だとは感じられない。奥多摩湖から登ってくるとここでひと息つくかもしれないが、尾根はまだ上へと伸びていく。イソツネ山よりも、イソツネの頭のほうがしっくりくるかもしれない。ところでイソツネってどんな漢字を当てるのだろう。

棒ノ木尾根にもどり、さらに上へと登っていく。今日の目的は果たしたからここで終わりでもいいのだが、登り尾根の途中で帰るのは気持ち悪い。それに歩いたことのあるルートまで繋げておきたい。

しばらくは踏跡の怪しい急登が続いたが、やがて尾根は広くてなだらかになった。まもなく奥多摩湖から六ツ石山への一般ルートと合流する。

六ツ石山まで登り、奥多摩駅へ下山することにしよう。

2021年2月