灼熱の埼玉でうどんを食べて湖を眺め、山に登ってコーラを飲んだ日

埼玉県に来てしまった。特に用事があったわけでも目的があったわけでもない。朝からすることもなく、なんとなく車に乗ってなんとなく運転してたら、いつのまにか埼玉県に入っていただけだ。うちから埼玉はけっこうすぐ近くなのだ。

さて、どうしよう。このまま無目的に走っていても、いつのまにか群馬に入っているだけだろう。運転は苦ではないが、ただ運転してるだけで楽しめるほど酔狂でもない。

そうだ、埼玉だからうどんを食べよう。多くの人は知らないかもしれないが、埼玉と言えばうどんなのだ。そして私は埼玉のうどん、いわゆる武蔵野うどんが大好きなのだ。どうせヒマなんだから、いつも大行列してて入れないうどん屋へ行ってみよう。何度か前を通ったものの、駐車場待ちの車列までできててとてもじゃないが並ぶ気にはなれず、まだ一度も入ったことのない店だ。まだ朝早いから、いまから向かえば開店前に到着できる。

あれ?そういえばあの店、どのあたりだったっけ?なんて名前の店だったっけ?あまりに曖昧な記憶を頼りに、Google検索様のお力添えをいただき、たぶんここだろうと川島町の『庄司』というお店へ向かった。

究極の武蔵野うどんを堪能する

開店一時間前にもかかわらず、すでにけっこうな数の人が並んでいた。車から出るのをためらうほどの凶悪な真夏の日差しが照りつけているが、ギリギリで日影に並べた。私の後からも続々と人がやってきたが、全員が凶悪な真夏の日差しに晒されて待つことになる。そうまでして食べたいのか、うどんを。

店内はまあまあ広く、なんとか一巡目に入ることができた。助かった。いくら日影でも、あんな暑い中でボーっと立ってるのは苦痛だ。

うどんは実に美味しかった。太くて固くて無骨な典型的な武蔵野うどんだが、野武士の風情の中に繊細な上品さを秘めている。口いっぱいに頬張って咀嚼すると、うどんの風味につけダレの風味が重なって、ふわっと鼻腔に抜ける。まさにこれこそ武蔵野うどんの正統派、というか武蔵野うどん界でもトップクラスのうどんではないか。

うむ、これは並ぶのもわからなくはない。夏なのですったてを食べたが、定番の肉汁うどんも食べておきたいし冬には呉汁もある。並ぶの覚悟でまた来よう。なるべく暑くも寒くもない日に。

さて、うどんを食べたらもうすることもない。とりあえず山の方へ向かってみた。特に意味はない。埼玉だから海へ向かうこともできない。

鎌北湖が近かったので行ってみることにした。登山の起点になっているので奥武蔵の登山地図で目に付くが、山脈の向こう側にあるので、山脈のこちら側の住民としては交通の便が良くなくてまだ行ったことがない。

湖の定義に想いを巡らし、灼熱の午後に低山を登る

駐車場に車を停めて湖を眺めた。ふーんって感じだった。湖というと山中湖とか諏訪湖とかをイメージしてしまうが、そんなメジャー級と比較すると明らかに小さい。湖の定義を知らないのでなんとも言えないが、これはどちらかと言えば「池」もしくは「沼」ではないだろうか。

せっかくここまで来たので山にも登っておく。貧乏性なのだ。それに他にすることがあるわけでもない。地図を見て越上山へ行ってみることにした。聞いたこともない山だが、1時間半程度でお手軽に登れそうだったのでそこにした。こんな暑い日の午後に長時間登山はしたくない。

登り始めてすぐに後悔した。暑すぎるのだ。記録的猛暑の午後に低山に登るなんてまともではない。登るならせめて朝の涼しい時間帯だ。実際、登山者はだれもいない。越上山は、まあ予想通りの山頂だった。

もう少し先まで進んで顔振峠まで行った。まだ15時前だというのに、峠の茶屋はすでに店じまいを始めていた。こんな暑い日の午後に登ってくるおバカ者もそうそういないのだろう。

自販機でコーラを買って、店内は片付け中だったのでテラス席で飲んだ。峠の茶屋に「テラス席」なんて言葉はしっくりこないこと甚だしいが、適切な日本語を思いつかない。野外席?屋外席?どっちもピンとこないな。そんなことを考えながらコーラを飲んだ。冷えたコーラは美味しかった。

顔振峠まで来たのは、ここから別ルートで下山して周回できるからだ。だが、もういいや。暑いし疲れたしコーラを飲んで満足したし。周回すると距離が長くなる、最短距離で下山しよう。つまり来た道を引き返すのだ。当然ではあるが、越上山は巻く。

下山して、もう一度「湖」を眺めてから帰宅した。

2024年8月