山頂デザート × 山頂ラーメン @奥多摩 – 鷹ノ巣山(八丁尾根)

「じゃあ、次回は奥多摩で」

えっ…。奥多摩ですか…。

S子先輩とM子先生から、次回山行の行き先を言い渡されました。
この三人の中でわたくしに拒否権はありません。神様仏様奴隷の関係ですから。従います。

でも、奥多摩ですか…。

自宅から奥多摩はすぐ近くです。1時間も運転すれば着いてしまいます。それに途中には勤め先があります。
会社へ行くのと同じ道を走り、会社の横を通過して、その先も毎日走っている担当エリアを抜けると、すぐに奥多摩です。
全く新鮮味がありません。休日にお出かけした感が皆無です。

でもまあ従いますけど。神様仏様のお告げですから…。

「じゃあ、ルートは決めといて」

はぁ…。

いつものことですが、ルート設定や集合場所などの細かいことは全て丸投げです。
神様仏様は、そんな世俗の雑事はいたしません。

いくつかご提案したルートの中から、神様と仏様の話し合いにより、行き先は八丁尾根を通っての鷹ノ巣山に決まりました。
以前にわたくしがひとりで歩いたことのあるルートです。

ひとりで八丁尾根を歩いてきたと知ったS子先輩は「わたしも行きたかったのに~~」と口を尖らせておっしゃっていました。
しかし、初見のバリエーションルートで神様のお供ができるほど、わたくしは有能ではありません。自分のことでいっぱいいっぱいです。

今回は二度目なので、なんとかなるでしょう。たぶん…。

鷹ノ巣山は全域が猟区であり、バリエーションルートを歩くので、できるだけ派手な服装でとお願いしました。上がピンクで下は黄緑、帽子はオレンジなんてのでと。

「ピンポンパンのお姉さんみたいな格好ね!」

ピンポンパン…。ママと遊ぼうピンポンパンですか…。調べてみたところ、放送は1982年で終了しているようです。

にもかかわらず、当日は三人とも上は黄緑で下は黒という比較的地味な格好での出発でした。撃たれないよう注意しないと…。

すっかり葉も落ちて、明るい尾根を歩いていきます。

初夏に歩いた時は薄暗い樹林帯の中でしたが、秋の終わりの今回は木々の間から透き通った青い空が見えています。

すっかり葉が落ちたということは、足元は落ち葉でいっぱいだということです。わずかばかりの踏み跡は、落ち葉で隠されて全くわかりません。
尾根通しに歩けばいいとはいえ、尾根は広い部分もあります。慎重にルートを見定めながら進みます。

緊張感いっぱいでルートファインディングしているわたくしの後方で、神様仏様はおしゃべりに夢中です。
気が散るので聞かないようにしていても、会話の内容が断片的に耳に入ってきます。

「うちの実家の電話は、いまだに黒電話なの~」
「つい最近まで、欲しい本は本屋で注文して一週間くらい待ったのにね~」

神様仏様の会話は、なかなかシブいです。

それにしてもよくしゃべります。ずいぶんおしゃべりな神様仏様です。これなら獣と間違えて撃たれる心配もありません。

山行前日の夜も、大いに酔っ払った神様仏様は深夜の駐車場で大盛り上がりし、ちょっと賑やか過ぎるのでは…とハラハラさせられました。

「あら、こんなの普通よ」
「いつもお葬式みたいな暮らししてるからよ」

うっ…。確かにわたくしは毎晩、壁を見つめて焼酎を飲んでますが…。

八丁山の手前の岩場に差し掛かりました。ここでわずかのあいだ樹林帯が途切れ、見晴らしがよくなります。

夏場だとここまで薄暗い樹林帯で、ここで初めて展望が開けて、わーっ!となるところですが、秋の終わりの尾根上では、歩いてる間ずっと、葉を落とした木々の向こうに周囲の山々が見えていました。

とはいえここが、この尾根で最も見晴らしのいい場所であります。

進む先に聳える鷹ノ巣山。ヒルメシクイノタワもはっきり視認できます。
背後には長沢背稜の山々。深い山並みに囲まれて、周りには他に誰もいません。

「あ~!南アルプスだ!」

長沢背稜の奥にちょこんと頭だけ見えてる雪山を指して、S子先輩が言っています。

いや、そっちは群馬方面ですから…。神様は少し方向音痴なようです。

神様仏様から毎回厳しいチェックを受ける当ブログのこのシリーズですが、前回の燧ヶ岳山行記に関して「事実と違う!!」という強い抗議がM子先生からありました。

当該の記事中でM子先生の髪型を釈由美子カットと記述しておりますが、実際はM子先生が美容院で「わたしを吉瀬美智子にしてください!」とお願いしてカットしていただいたヘアスタイルだということです。

事実をありのままに記すことをモットーとしている当ブログにおいて、事実と異なる記述がまぎれてしまったことを、ここに深くおわびし訂正いたします。

しかし毎回チェックが厳しくて、なかなか書きづらくなってきました。今回は抑えめで控えめにしておこうと思います。

八丁山を過ぎて少し下り、八丁尾根に取り付きます。

取り付き点は広いタワになっていて、どこから登るのか定かではありません。落ち葉で踏み跡も見えないので、尾根を目指して適当に上がります。

誰も歩いた形跡のない柔らかな急斜面を立木につかまってよじ登り、八丁尾根に乗りました。

振り返ると、神様仏様が這いつくばりながら、急な斜面を登ってきています。
ふふふ。なかなか楽しいな。この先はもっとキツいですからね(ニヤリ)

細尾根を通過し、お伊勢山を超え、遭難碑のある鞍部からヒルメシクイノタワを目指して最後の登りを登ります。

標高を上げるにつれて、数日前に降った雪の溶け残りが出てきました。踏み跡を見る限り、この日までにここを通過したのは二名のようです。

しだいにルートが不明瞭になり、どんどん傾斜が急になってくる残雪の斜面を登っていきます。

さすがの神様仏様も、しだいに無口になってきました。

ひたすら登りを登り続けた先で、唐突にヒルメシクイノタワの背後へ出ます。

バリエーションルートはここまで。この先は一般ルートです。

ここまで登ると達成感がありますが、山頂はまだ先です。まだまだ登りは続きます。
ここでやり切った気分になると、この先はつらいですよ(ニヤリ)

さ~て、行きますか。

稲村岩尾根は登山者も多く、残雪が踏み固められて凍結していました。滑らないように注意して登っていきます。

しばらく登ると木々のすき間にぽっかり空いた空間が。あそこだ。到着です。

山頂に出ると、正面には富士山が出迎えてくれました。

雲が出てきたから見えないかなって思ってましたが、なんとかもってくれたようです。今日の富士山はなんだかいつもより大きく見えました。

富士山の横には、雪のついた南アルプスの稜線もくっきり見えてます。
こっちは群馬ではなく、山梨と静岡の南アルプスです。

ひとしきり風景を堪能したので、お昼ご飯にします。

お昼ご飯は神様仏様の先輩命令で…と書くとまた叱られるので、お二人のご要望により、わたくしが作る山頂ラーメンとなりました。
それと、餃子女子のM子先生が焼く、有名店の餃子です。M子先生にお会いするたび、毎度この餃子について熱く語られるという思い入れの深い餃子です。

麺係りをお願いしたS子先輩は、秒単位で設定している茹で時間を、分単位で間違えてくださったり、鍋の中身を危うくぶちまけそうになったり、その横では餃子女子が「油が~〜」「フタが~〜」と、ひたすらひとり言をつぶやきながら、ひたすら餃子をひっくり返してたりとカオスでしたが、なんとか完成しました。

ラードたっぷり味噌ラーメン。

それと有名なお店の餃子。

お二人はラーメンをおいしいおいしいと言って食べてくださります。

「わたしたち、だれかに作ってもらうってだけで感激だもんね~~」

いやそれ、わたくしもですが…。

「この味玉おいしい〜」
「次から毎回、必ず味玉を持ってくるように!」

は、はい…。

食後にはS子先輩にコーヒーとデザートもいただきました。

しかしこれ、とてもバリエーションルートを上がってきたとは思えない豪華ランチですね。

お腹いっぱいですが下山します。風も冷たくなってきました。

凍結した斜面を慎重に下り、単調な稲村岩尾根を黙々と歩き、稲村岩にも寄り道して、日原へと下山しました。

あれは書くな、これはやめろと、神様仏様の厳しい検閲が入り、そのあげくに「今回はブログに書かれるようなことはなかったわね~。わたしたち優秀よね~」などとのたまわっておりましたが、じゅうぶん盛りだくさんだったと思います。
ネタが尽きないですよね…。

再び、仕事で毎日運転しているエリアを抜け、前日も走り翌日も走る会社の横の道を通って帰ります。

温泉に入ってから三人で夕飯。
神様仏様はビール、運転手は水で乾杯となりました…。

神様S子先輩の神ブログはこちら

山頂デザートな日々