サラダパン
滋賀県の一部地域で根強い人気があるというサラダパン、製造するのは木之本のつるやパンだ。ごく普通の町のパン屋さんといった佇まいの店頭には大量のサラダパンが並べられている。
二人組の女性客が店内にいたが、それぞれがサラダパンを30個40個とカゴに入れていく。その他のパンも含めて5千円以上をパンに費やしていた。私は一度に500円分もパンを買ったことがないので驚きだ。レトロなパッケージを模したサラダパンキーホルダーまで販売されていて、ちょっと欲しいなと思ったが、あんまり使い道ないかもなと思い直して買うのはやめた。
私の後から入ってきた男性もサラダパンを20個ばかり買っていく。確かにすごい人気だ。あまりにもみんながサラダパンを買っていくので、売り切れてしまうんじゃないかとあわてて二つだけ買い求め、近くの湖畔で早々に食べてみることにした。
ひとくち齧って、はぁ???となった。臭いのだ。なぜか漬物臭いのだ。勘違いかなと思いもうひとくち食べてみたが、やはりほのかに臭う。原材料を確認すると、小麦粉、たくわん漬、マヨネーズ、砂糖、マーガリン、卵…とある。
たくわん漬!!!
まさかそんなと半信半疑でパンの中身を見ると、細かく刻まれたたくわんのマヨネーズ和えがはさんであった。サラダパンという名前は聞いたことがあるし、パッケージデザインを見たこともあったが、それがどんなパンなのかは知らなかった。知らずに食べたから衝撃だった。
たくわんを細かく刻んでマヨネーズで和える ←まあ、わかる
それをパンにはさむ ←すでにわからない
それにサラダパンと名付ける ←完全にわからない
なぜこんなパンを作ったのか、どんな思考回路をしてるのか、まったく不思議なパンだ。だがしかし、このサラダパン、それほどキワモノというわけでもない。なぜだか意外と美味しいのだ。まずはなんと言ってもコッペパン自体が美味しい。田舎の寂れたパン屋がネタで作ってるパンではない。おそらくは長い年月をかけて改良に改良を重ねてきた結果なのではないだろうか。
この美味しいパンになにもたくわんのマヨネーズ和えをはさまなくても…というのは至極もっともな感想ではあるものの、これはこれで悪くはない。というか、たくわん漬のいなたい風味が、木之本の古い町並みやパンのレトロなパッケージにピタリとはまり、唯一無二の味を生み出している。
ここにしかない独特の、かと言って奇をてらったキワモノではない、ちゃんと美味しいパンだった。
2025年2月